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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 76


話によると昨日、勇者と名乗る男を門前払いにした事が法王の耳に入り「それはひょっとしたら本物の勇者かも知れない。探して出して確かめて来い」という話になったのだという。
バンにとっては幸運な事に数日前に「勇者一行がそちらにお邪魔するかも知れませんのでよろしく」とのパラム国王からの書簡が法王に届けられたばかりだった。シスカがこまめに本国への報告書を送っていたため、パラム国王が手を回してくれたのである。
そして勇者を探して宿屋にやって来た神聖騎士団にシスカがパラム国王の署名入りの命令書を見せ、本物の勇者である事が証明された。
ところが肝心のバンが居なかったため、仕方なく皆で市内を探し回っていたという訳だ。

「…なるほど、そういう事だったか…」
バンは頭を掻きながら小声で隣にいたアイラに囁いた。
「エミリア達を逃がしたの、早まったなぁ…」
「しょうがないわよ(昨日カスター達と揉めた)あの状況じゃあねぇ…」
フォローするアイラ。その姿を見たメリサリムとシスカが声を上げた。
「あ!あなたは…」
「ラカンで会った謎の女!」
バンはポカンとした口調で言った。
「何だ、お前ら知り合いだったのか?」
「いやぁ、知り合いも何も、我々がラカンでケンカ別れした後、彼女が現れて主殿とヨリを戻すよう説得されたのです。言わば私達パーティーの恩人のような人ですよ」
「何だアイラお前、そんな事してくれてたのか…」
「いやぁ、まぁ…」
アイラは照れ臭そうに頬を赤らめてモジモジと身をよじらせた。バンはそんな彼女の肩に手をポンと置き、三人の仲間達に向かって言った。
「決めたぜ…お前ら!こいつは…アイラは今日から俺達の仲間だ!」
「はぁ!?な…何言ってんのよ!?」
驚いたのはアイラ自身だ。だが他の三人は異存は無いようだった。
「わぁ♪仲間が増えました」
「何だか事情が良く解らんが悪い人間ではなさそうだ…歓迎しよう」
「アイラとか言ったか、よろしくな!」
「な…なんて適当なパーティーなの…」
アイラは呆れる。
「そういうパーティーなんだよ」
バンは笑って言った。

騎士達はバン達に頭(こうべ)を垂れて言った。
「聖剣の勇者バン・バッカーズ様、昨日の非礼をお許しください。法王猊下の元へお連れいたします。我々にご同行いただけますか?」
「おう!連れて行ってくれ!俺も法王とはサシで話してぇ事が幾つかあるんでな!」
こうしてバンと仲間達は神聖騎士団の騎士達に伴われ、聖都ルーシェアの中枢、法王庁のあるルーシェア大聖堂へと向かったのであった。


一行は昨日とは異なり、堂々と南側の正門から大聖堂のある中央区へと入った。
中には整然と並んだ白い壁の建物、掃き清められて塵一つ落ちていない道、その道を行く純白の聖衣の聖職者達は街の人達とは異なり何の不安も無さそうな穏やかな顔付き…塀の内側は外側とは正に別世界だった。
中央通り真っ正面に法王庁…ルーシェア大聖堂があった。聖堂正門に至るまでには神聖騎士団の純白の騎士達が直立不動の姿勢で等間隔に並んでいた。

「でけぇ〜…」
大聖堂の正門に辿り着いた一行は、その巨大さに圧倒された。例えば年季の入った両開きの門扉だけでもパラム王宮のそれの倍以上はある。
「聖剣の勇者バン・バッカーズ様ご到着!開門ーっ!!」
バン達を伴って来た騎士の隊長が音吐朗々そう告げると、警備に当たっていた二人の騎士が最敬礼し、大聖堂の巨大な扉がギギギ…と音を立てて開いた。

「こちらでございます」
バン達はてっきりすぐに法王に会える物と思っていたが、待合室のような部屋へと案内された。
室内は金銀をふんだんに使用した豪華な調度で統一されている。
「随分とまあ贅沢な部屋だなぁ…市民達には極貧の生活を強いておいて」
半ば感心、半ば呆れたような口調でバンは呟く。アレイダが言った。
「ま、支配者ってのは概ねそんなもんさ。自分の権力を誇示するために身の回りの衣、食、住…全ての物を過剰なまでに飾り立てるんだ。特に外から来た者の目に触れる所はことさら念入りにな…」
「何だ、やけに詳しいじゃねぇか。まさかお前、どっかの国のお姫様でした〜…なんて言うんじゃねぇだろう?」
バンはほんの冗談で言っただけだった。ところが…
「ど…どうして判った…!?」
「へ…?」
驚きの表情でバンを見つめながらアレイダは言った。

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