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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 75


「…そ…そう!そうなのよ!昨夜はちょっとした事で口論になってしまって…」
「あ…ああ、でもすぐ仲直りしたんだよなぁ…ハハハハハハ」
子供達にセックスの知識が無くて助かった。エミリアとバンはこれ幸いと必死にごまかす。
「シスター、いつも私達にケンカはダメって言ってるクセにね〜」
「何で二人はケンカしたの?」
「そ…それは…」
子供達の興味は尽きない。二人は困り果てた。その時だった。

ドンドンッ

「おい!開けろ!神聖騎士団だ!」
玄関の方から扉を叩く音と男の声がした。
「神聖騎士団!?」
一瞬助かったと思ったエミリアだったが、来客の名を聞いた途端に真っ青になった。バンは首を傾げて尋ねる。
「どういう事だ?」
それに応えたのはアイラだった。
「たぶん昨日カスターと手下共をブチのめした事に対して…じゃないかしら?」
「あぁ…もう終わりです…」
エミリアは頭を抱えてテーブルの上に突っ伏してしまう。そんな彼女の肩にバンは手を置いて言った。
「まだ諦めるのは早いぜ。俺が出て時間を稼ぐ。その間にアンタは子供達を連れて裏口から逃げな」
「で、でもバン様は…!?」
心配そうに尋ねるエミリアにバンはグッと親指を立てた。
「な〜に、俺の事なら気にするな!適当に切り抜けてみせるさ!さあ、グズグズしてる暇は無いぜ。早く行け」
「は、はい!皆さん、ここはバン様のご好意に甘えて私達は逃げましょう!」
エミリアと子供達は出て行った。食堂に残ったのはバンとアイラのみ。アイラはバンに尋ねる。
「カッコ付けちゃって…切り抜けられる自信はあるの?」
「な〜に、切り抜けられなきゃ斬り抜けるだけの話さ…」
そう言いながらバンは腰に下げた聖剣の柄に手を掛ける。アイラは溜め息混じりに言った。
「ハァ…神聖騎士団はそこらの盗賊なんかとは別格よ。しかもアンタ、人を斬った事無いんでしょ?」
「ヘヘン…俺を誰だと思ってやがる!?泣く子も黙る聖剣の勇者バン・バッカーズ様だぜ!…さあ行こう」
バンは勇んで玄関の方へと向かって行った。一方、アイラは不安げ…内心密かに恐怖してさえいた。
(このバカ、神聖騎士団の恐ろしさを知らないんだわ…血を見る事にならなきゃ良いんだけど…)

法王庁の軍隊である神聖騎士団…現在は聖都とその周辺の小村のみで構成される法王領だが、その昔は広大な領土を大陸中央に有する一大勢力だった。その繁栄の礎(いしずえ)を築き上げ、さらに数百年の時を経て今なお法王庁の権威を支え続けているのが他ならぬ神聖騎士団である。
彼らは至聖神ヴォル・ヴァドスに忠誠を誓い、その教義の守護者として鉄の掟と血の結束によって結ばれ、諸国から恐れられていた…と言って、実力で他国の騎士団に圧倒的に優っているという訳ではない。恐ろしいのは彼らのメンタリティな部分…すなわち死すら厭わない信仰心である。
信仰の為に命を落とした者は死後、神の国へと召され、そこで永遠の生命を得る…とかなんとか。つまり命知らずなのだ。これほど敵に回して恐ろしい者はいない。

それ故に聖剣の勇者であるバンでも、相手が勇猛果敢な神聖騎士団の軍勢を切り抜けるのは不可能だとアイラは思っていた。
(はあ〜あたしって、何でこうも運がないのよ)
自分の不運を呪いながら、アイラは玄関でぼやいていた。
「何しけた顔をしてるんだ!俺は聖剣の勇者だぜ、アイラ!」
「そうだったわね…頑張って勇者様(あ〜この馬鹿と関ったのが運のつきね)」
アイラは危機感ゼロのバンと心中する覚悟を決めた。

バンは扉を開いた。そこには神聖騎士団の軍装に身を包んだ5〜6人の男達が立っていた。その中の隊長と思しき壮年の男が不思議そうにバンとアイラに尋ねた。
「む…お前は神官ではないな?この神殿の神官はどうした?」
「なに、ちょっと外出中だ。俺は留守番さ。それよりアンタラ、一体何の用だい?」
「我々は法王様のご命令で“ある人物”を探しているのだ。何か知っている事があれば…」
何だ…コイツラは別にエミリア達を取り締まりに来た訳ではなかったのか…とバンが思っていたその時だった。騎士達の後方から聞き慣れた声が聞こえて来た。
「勇者様!」
「隊長殿!そのお方です!」
「何だいバン、昨夜はちっとも帰って来ないと思ってたら、こんな所に居たのかい」
男達の後ろから姿を現したのはメリサリム、シスカ、アレイダの三人だった。
「お…お前ら、何で神聖騎士団と一緒に居るんだ!?」
驚くバンにメリサリムが説明する。
「いえ、それが今朝方この方達が私達の宿にいらっしゃって“勇者様を探している”と仰いまして、それで私達が勇者様の仲間である事を伝えたら…」

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