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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 69

「わ…わかったよぉ…え〜と、天に坐(ましま)すミネルヴァ様、ガイア様、セポイ様、ポロン様、イリス様、その他の皆様、今日も元気に飯が食えるのは皆様方のお陰ですよっと…いただきまぁ〜す」
「ハァ…あんたに礼儀を要求した私が間違ってたわ」
「…さ〜て、それでは…」
バンは改めて自分の膳に配された食事を見た。
「……って、これだけかぁ?」
そこにあったのは、ひとかけらの黒パンと、野菜の塩茹でと、ほぼ湯のようなスープのみ。一食分としてはいささか低カロリー過ぎる。
「だから期待するなって言ったのよ」
愕然とするバンの隣でアイラは小声で平然とそう言って薄いスープをすすった。
「申し訳ありません。こんな物しか用意出来なくて…でもこれが私達の平素の食事なんです」
申し訳なさそうな情けなそうな表情でバンに詫びるエミリア。別に彼女が悪い訳ではないのだが…。飲酒、肉食、その他の嗜好品が禁止されているため、必要最低限の食材しか手に入らないらしい。
「いや、しかしよぉ…こんな物ばかり食べてて栄養失調にならねぇのか…?」
「もちろん…特に成長期の子供達は栄養が足りません。ですから定期的に闇市へ行ってお肉やお魚など法令で禁止されている食材を買って来るんです。実は先ほど法王庁の神官達に取り囲まれていたのも、闇市からの帰りに見咎められてしまって…そこへバン様達が助けてくださったのです」
「そうだったのか…しかし闇市なんて物があるんだな」
「はい、通常の十倍以上の値段で違法の品々を取り扱っています」
「十倍!?ボッタクリも良い所じゃねぇか!」
「でもみんな買います。そうしないと生きていけませんから」
「ハァ…で、法王庁はそっちに対する取り締まりはしねえのか?」
「はい、闇商人達はだいたい他国籍ですし、それに法王庁に一定額を納める事によって本来なら禁止されている商業行為を黙認されているんです」
「そして法王庁はその商品を買った聖都の市民達を違反者として捕まえて罰するって訳か…まるで市民を罠に掛けてるみてえだな」
「はい、その取り締まりの総責任者が先程のカスターという男です。彼は自分の立場を利用して、逮捕した女性や子供に乱暴したり、没収したお酒やお肉を自分達で飲食してしまったりと、やりたい放題なんです」
「何てこった…法王庁の上の方の連中はその事を知ってるのか?」
「おそらく知らないでしょう…カスターは元は他国で罪を重ねた盗賊くずれでしたが、法王様に上手く取り入って今の地位を得たそうです」
「…何とも…救いようが無ぇな…」
バンは子供達の顔を眺めながらつぶやいた。

(こりゃ何としても、法王の野郎に謁見しなきゃならねえな!)
エミリアと子供たちの窮状を知り、憤るバンは法王に謁見する決心が強くなる。
「そうとなれば、食べるか!!」
「あんた良い奴だね…(こいつを殺すのは間違いかも。まあ、依頼者自体がろくでなしだからね)」
法王にガツンと言わせるのを決めたバンは自分の膳にある僅かな食事を食べ始めた。
乏しい食材なのに自分の為に割いてくれたエミリアたちの厚意を無にしたくなかったのである。
そんなバンの優しさをアイラは小声で褒めこの男を暗殺する依頼は間違い何ではないかと思い始めていた。

「所でバン様とアイラ様はこれからどうするのですか?」
食事を終えてエミリアはバンにこれからどうするか訊ねる。
「迷子になった仲間を探す。この聖都にいるのは解ってるからな。全く俺がいなければ何もできない連中でな。はっはっは!!!」
「まあ、大変ですね。きっと見つかると思いますわ」
「そっそうだったわね(迷子は自分なのに、エミリアにかっこつけちゃって、このお調子者!!)」
調子のいい嘘をつくバンの言葉をあっさり信じるエミリア、命の恩人であるバンの言葉だから信じてしまうのであった。
しかし、真相を知っているアイラはバンの調子の良い嘘に呆れ返る。

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