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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 66

「はぁ…?」
アイラは首を傾げた。常に明朗快活な男が、今に限って口が重いのである。心なしか顔色も青ざめている。
「バン…あんた、もしかして人の死を見たのはこれが初めて…?」
「…ああ…」
バンはそう一声だけ言い、首を小さく縦に振る。アイラは肩をすくめて「ハァ…」と溜め息を吐いてから諭すように言った。
「…だったら今回は良い経験だったわね。あんたも好むと好まざるとに関わらず剣士って言う職を選んだんなら人の死とは無縁では居られないはずよ。これからの人生で嫌ってほど見る羽目になると思うわ。時には敵だけじゃない、仲間の死もね…」
アイラの言葉には重みがあった。それは“暗殺者”という、人の命を奪う事を仕事として生きて来た彼女ならではの物かも知れない。
アイラの話を聴きながら、バンは愛しいメリサリム、シスカ、アレイダ達が死を想像する。
(仲間の死か…メリサリム、シスカ、アレイダが死んだら。俺は、どうなるんだ?)
そして、今まで考えたことがない愛しい女たちの死にバンは恐怖で凍りつく。
「まっ今夜は見逃して宿の近くまで送るわよ」
「ありがとうな。しかし、お前って本当に俺のことを惚れてるな」
麻痺が切れてもフラフラなバンをみかねて、アイラは彼を支えて宿の近くまで送ることにした。
このアイラの厚意にバンは感謝する。
アイラはバンに礼を言われ顔を赤くする。
「こっ今夜だけよ。あんたを殺すのは私なんだからね!」
「そういうことにしてやるよ。しかし、良い尻して、イテテッッ!!」
「下手な事をすんじゃないよ!!」
バンは軽口を叩きアイラの尻をいやらしく撫で回すが、アイラに耳を抓られ悲鳴を上げる。
「テメー!!何しやがる!お前はもう俺の女だろう!!」
「何で私が、あんたみたいなスケコマシ野郎の物にならなきゃいけないのよ!!」
しょうもない痴話喧嘩を繰り広げるバンとアイラ。

と、そこへ…
「あ、あの…!」
「…よぉ、あんた。逃げたんじゃなかったのかよ?」
後ろから声を掛けられ振り向くと、そこには先ほど逃がした女神官が立っていた。
「はい、是非とも助けていただいたお礼がしたくて…あ、申し遅れました。私、エミリアと申します。よろしければ私達の家へおいでいただけませんか?」
このエミリアという女神官、歳はバンより少し上で20歳前後といった所か、小柄だが良く良く見れば彼女の僧服の胸元は、確実に片手には余るであろう二つの大ぶりな膨らみによって今にもはちきれそうだ。顔立ちもなかなか可愛らしい。
「え?そうかい?それじゃあ、お言葉に甘えちゃおうかなぁ〜…」
バンが鼻の下を伸ばしながら答えると、アイラが肘でツンツンつついてきた。バンは小声で答える。
(あんだよ!?)
(あんたねぇ、いくら良い女でも相手は尼さんよ。一応言っとくけど、そっちの意味での“お礼”は期待出来ないからね?)
(バカヤロ!んな事ぁ分かってるよ…ただ、万が一という事が無いとも限らんじゃないか!)
(あぁ…真性のバカだ…)
見境の無いバンの性欲にアイラは呆れて溜め息も出ない。

かくしてエミリアの招待に与る事となったバンとアイラ、連れて来られたのは町外れのこぢんまりとした神殿だった。
「…まあ尼さんの“家”って言やぁ神殿だよなぁ…てゆうか神殿なのに一般居住区にあるんだな。宗教関連の施設はみんな塀の向こうの中央区にあるもんだとばかり…」
首を傾げるバンに対してエミリアは言った。
「法王庁のあるルーシェア大聖堂は至聖神ヴォル・ヴァドスを奉った神殿です。私達は愛と美の女神イリスの神殿…宗派が違いますから」
「はぁ!?宗派が違うってだけで差別されるのか!?」
「はい…先代の法王様の時代には、そんな事は無かったのですが…」
「なんてこった!…こりゃあメリサリムじゃねぇが、マジで法王の野郎に一言物申してやる必要ありそうだ…」
バンは苛立たしげに腰に当てた手の指先を動かした。
この男、一見破天荒な馬鹿に見えて、差別や不正などの不条理を憎む正義漢らしい一面も持ち合わせているのだ。

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