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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 62

「ハァ…とは言ってもなぁ、この街には酒場も無ぇし、ましてや娼館なんてある訳が無ぇ…ナンパしようにも街にゃあ若い女の子の姿一つ無ぇ…つーか人間自体が…」
バンが歩きながらボヤいているとすぐ隣から声がした。
「…確かに辛気臭い街よねぇ。聖都って割には華やかさも無いし…」
「ほんとほんと……ってお前…っ!?」
「お久しぶり…と言っても私ずっと姿を現さなかっただけで、あんた達の事を付けてたんだけどね」
そこに居たのは薄青色のショートヘアにエメラルド色の瞳を持つ美少女…そう、ウルスの街でバンの命を奪おうとして逆に処女を奪われてしまった暗殺者集団の刺客…アイラであった。
ラカンの街ではメリサリムとシスカに接触してバンとのヨリを戻させたが、バンとはウルス以来の再会(?)となろう。

「何だよ〜♪ずっと俺を追い掛けて来てたのか〜?やっぱり俺と過ごしたあの一夜が忘れられずに…?」
さっそくアイラの肩に手を回すバン。アイラはその手を払い退けながら言った。
「馴れ馴れしくしないで。私とあんたはあくまで暗殺者とターゲットの間柄なんだから…」
「本当にそれだけなのか?俺は…お前の事が…」
「ふえぇ…っ!?」
急に真剣になるバンにアイラは思わず顔を赤らめて素っ頓狂な声を上げた。バンは「ブフッ」と吹き出したかと思うと腹を抱えて爆笑した。
「ギャハハハハハ!マジになってやんの!『ふえぇ〜』って…ククク…腹痛ぇ…」
「…こ…この下衆男!よくも女心を弄んでくれたわね〜!?」
騙されたと気付いたアイラは懐から投擲用の短剣を数本取り出してバンに向かって一斉に投げ付けた。
「おっと危ねぇ!」
バンは笑いながらも素早い身のこなしで飛んで来た短剣を全て避けた。ふざけてはいても、やはりこの男の身体能力は相当な物だ。
バンは言った。
「…んで?今までずっと陰ながら見守って来たのが一体どうして今さら俺の前に現れた?ひょっとしてまた俺に抱かれたくなったのか?」
「な…っ!?そ、そんな訳無いでしょ!?私があんたの前に姿を現す理由はただ一つ!あんたを暗殺するためよ!」
怒っているのか図星で恥ずかしいのか、アイラは顔を真っ赤にして再びバンに向かって短剣を放つ。バンは避けながらアイラをからかうように言う。
「ヘヘッ…ずっと付けてたんだろ!?だったら寝てる時、風呂に入ってる時、メリサリム達と乳繰り合ってる時…俺を殺る機会なんざ、いくらでもあったんじゃねえのか?何で殺らなかったんだ?」
「そ…それは…っ!あ、相手の隙を突いて殺すなんて私のポリシーに反するのよ!」
「ハハッ!そりゃあずいぶん正々堂々とした暗殺者だな〜」
「うるさい!死ね!」
なおも飛んで来る短剣をバンは次々かわしていく。

しばらくすると辺りは地面や建物の壁に突き刺さった短剣だらけになった。
「しっかしお前以外とワンパターンだなぁ。もっと攻撃のバリエーション増やした方が良いぜ?」
「ふふ…でも今までのも無駄じゃなかったのよ?」
「なに…っ!?」
意味ありげに微笑むアイラにバンはハッとした。手足が動かせない。“それ”は日の光の加減で僅かに光って見えた。
「糸か…やれやれ、見えねえ武器にやられたのは今日で二度目だな」
いつの間にかバンの体には無数の透明な糸が絡み付いていたのである。短剣の柄に付いていたのだ。避けたと思っていたら気付かぬ内に絡め取られていたという訳である。アイラは言った。
「うふふ…驚いた?中央山脈の麓に広がる死の森に生息するマジカルスパイダーの糸よ。鷹の目でも見えず、熊の腕力でも断ち切れない死の蜘蛛の巣に捕らわれた感想はいかがかしら?」
「…正直、あんま良い気分じゃねえなぁ…」
バンは僅かに動く指先で手元にあると思しき一本をなぞってみた。指先が切れて鮮血がポタポタと地面に落ちた。もし無理矢理切ろうとして力任せに暴れたりしたら最悪の場合手足が落ちるだろう。

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