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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 59

「そう言えば、結局あの年に優勝された方ってどなたでしたっけ?」
メリサリムの素朴な疑問にシスカが応える。
「…私だ…」
「あれ?そうだったっけか?」
バンは首をひねった。あの年はエルティアの事で頭がいっぱいで、大して覚えていなかったのだ。シスカは半ばヤケ気味に叫ぶ。
「…主様とエルティア殿がノックアウトしたため繰り上げ優勝です!…あんな…あんな微妙な空気の表彰式は後にも先にもありませんでしたよ!…私、生まれて初めて優勝したのに…くぅぅ〜っ!」
「よしよし…」
当人としても何か複雑なものがあったのであろう、拳を握り締めて泣き入るシスカの頭をメリサリムは優しく撫でてやった。


そんなこんなで馬車に揺られること約一週間、一行はこの大陸の宗教的権威のトップ、法王庁のある聖都ルーシェアに到着した。

「ヘぇ〜…あれがルーシェアの街かぁ、建物みんな真っ白なんだなぁ…」
小高い丘の上から聖都を見下ろす一行。その街並みの美しさにバンも思わず感嘆する。だが最も感激していたのはメリサリムだった。
「素晴らしいです!さすが“白亜の都”とも称される聖都ルーシェア!あぁ…私ついに憧れのルーシェアに来たんですね!」
「何だ、ずいぶん嬉しそうだな、メリサリム」
あまりの興奮っぷりに半ば驚き尋ねるシスカにメリサリムは頬を紅潮させながらまくし立てる。
「それはそうですよ!神々に使える者にとって聖都は一生に一度は行きたい憧れの場所…聖地なんですから!私もダモクレス神殿では先代の巫女姫様や先輩方に毎日のように聖都のお話をお聞きしていました!…もっとも誰も実際に聖都に行かれた方はいらっしゃらなかったのですが…と、とにかく素晴らしい場所なんです!」
「そ…そういう物なのか…?」

キルケは街を指差して皆に説明した。
「皆さん、あの中央にそびえ立ってるでっかい建物が法王様のおわします法王庁のあるルーシェア大聖堂でさぁ!」
バンは鼻をほじりながらニッと笑って言う。
「へへ…そんじゃ、とっとと法王さんに会いに行くとするかぁ!」
その言動を見ていて急速に不安になったシスカはバンに注意した。
「…主様、一応申し上げておきますが、法王様は諸王の上に立つお方…つまりパラム王やゼノン皇帝よりも偉いお方です。くれぐれも失礼の無いように…」
「ふぅ〜ん…じゃあ聖剣の勇者の俺とだったらどっちが偉いんだ?」
「あぁ…」
平然と尋ね返すバンにシスカは頭を抱えた。そのやり取りを見ていたアレイダは腹を抱えて笑いながら言う。
「ハッハッハッ…法王とどっちが偉いかだって!?さすがバンだよ!」
「む…何かバカにしてねぇか?お前…」

「あの人あんなんで大丈夫かなぁ…」
そんなバン達を見て半ば呆れ、半ば心配そうにポツリつぶやくレオ。キルケは言った。
「レオよ、よ〜く見とけ。あれが器のでっけぇ男ってヤツだ。俺は前に“バッカーズさんはエルティアの旦那より人間としての器は小せぇ”と言ったが、その考えは改めねぇといけねぇかも知れんな。あの人ぁエルティアの旦那に引けを取らねぇでっけぇお人だ。うん、俺ぁそう思うね」
「いやぁ、僕にはただの世間知らずにしか見えませんが…」
「ハハハ…レオ、お前もまだまだ人を見る目が無ぇなぁ」

キルケの見立てが正しいのかどうかは今のところ定かではないが、とりあえず一行は聖都に足を踏み入れた。ところが…

「なんか…汚くね?」
「は…はあ…遠くから見ている分には美しかったのですが…」
「うむ…それに昼間だというのに人影もまばらだし…」
「おいおい…路肩に浮浪者の死体転がってんぞ…」

端的に言えば聖都ルーシェアは大きく二つの市街に分かれていた。大聖堂や法王庁を中心に聖職者達が暮らす中心部と、それを囲むように広がる市民達が暮らす外周部である。遠景で白く美しく見えたのは、この中心の部分だった訳で…。

「…いやぁ、あっしは以前にも一度…と言っても20年以上前になりやすが…聖都に来た事があるんだが、そん時ぁこんなんじゃなかったんですがねぇ…今の法王様は民に厳しいお方と聞いておりやしたが…」
そう言って眉をひそめるキルケにアレイダは言った。
「その話なら私も知ってるよ。今の法王の治世になってから馬鹿みたいに法令が厳格にされてルーシェアは急速に寂れたらしい。商業活動禁止、贅沢品禁止、肉食禁止、酒禁止、宗教音楽意外の音楽禁止、学術研究禁止、演劇・文学・その他ありとあらゆる娯楽の徹底した排除…破った者は老若男女を問わず死罪…」
「最悪だな」
バンは一蹴した。

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