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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 58

「父さんったらまたそんな事を・・・兄さんは確かに少しお調子者な所は有りますが、根は真面目で周りの面倒見も良い器の大きな人ですよ・・・実際何だかんだ言って、道場でも若者は皆兄さんを慕っていたでは有りませんか・・・」
へーデンはそう言って兄を弁護する。
自分の事をクソ真面目で面白みの無い人間だと思っているへーデンにとって、不真面目で傍若無人にも関わらず。
自分には及びもつかない程の天才的な剣士であり、何故か周りに自然と人が集まってくる兄は一種の憧れの存在なのだ。
まあ多分に美化されている気がしないでもないが・・・。
「フン!その分目上の人間からは嫌われておったがな・・・大方今回も国王陛下か、重臣の方々に無礼を働いて体よく厄介払いされたのであろうよ・・・我がバッカーズ家に御咎めが無かったのは、不幸中の幸いで有ったわ!!」
へーデンは父がバンの身を案じて毎日戦神ミネルヴァの神殿に通っているのを知っていたので、父のその言葉に苦笑を浮かべた。
「まあ兄さんの事だから、きっと元気にやってますよ」
「フン!ゴキブリよりもしぶとい男じゃからな。全く憎まれっ子世に憚るとは、良く言った物じゃわい」
へーデンとグラーズがそう話していると、門の前に馬車がやって来た。
「グラーズ・バッカーズ殿!へーデン・バッカーズ殿!いらっしゃいますか?王宮より御呼びです!スグに支度をお願い致します!!」
「?王宮の呼び出し?」
「一体何ごとじゃろう?」
二人は首を傾げながら、スグに王宮へ出仕する為の支度を始めた。



その頃バンたち一行は・・・
「へっくしゅ!」
「あら?風邪ですか勇者様?」
「いや大丈夫だ・・・どうやら何処かの美女が俺の噂をしているようだ・・・フッ!モテる男は辛いぜ・・・」
メリサリムは当然のようにバンの言葉をスルーする。
「如何しましょう?私はまだ病を癒す術は使えませんし・・・風邪のお薬買い置きが有ったかしら?」
六人を乗せた馬車は法王庁のあるルーシェアと呼ばれる都市を目指し、街道を北へ北へと進んでいる。
ちなみに、その更に北に位置するのが、西大陸最大の領土を誇るゼノン帝国である。
「…しっかしキルケのオッサンよぉ、エルティアはクラタナの街から姿を消して以来まったく行方知れずだってんだろ?よく探そうだなんて思い立ったもんだなぁ」
「へへ…あっしはあのお方に心底惚れ込んじまったんでさぁ…おっと!変な意味じゃありやせんぜ。あの人は必ず大きな仕事をするお方だ…理屈じゃねえ、商売人の勘がピーンッと来たんでさぁ」
「ふ〜ん…で、その商売人の勘ってヤツで見て俺とエルティア、どっちが強いと思う?」
「そいつぁ戦ってみなけりゃ判りやせんねぇ」
バンとキルケの会話を聞いていたアレイダが笑いながら口を挟む。
「な〜んだ、てっきり胸張って“エルティアの方が強い”って言うと思ったけどねぇ」
キルケは言った。
「…ただし、失礼ながら人間としての器はエルティアの旦那の方が上でしょうな。あの人は少なくとも“どっちが強いか”なんて事にはこだわりやせんからね」
「う〜ん…言うなぁオッサン…」
バンは顔をしかめる。
「フン!俺に言わせれば、そんなのは腰抜けの言い訳よ!剣士の本音って奴は、本当の所は自分が一番に成りたいって事なのさ!『剣は人を殺す為の物では無く生かす為の物』『剣の修行の目的は剣の理法の修練による人間形成である』全て嘘っぱち!強く成りたい!勝ちたい!誰にも負けたくない!自分が最強だと証明したい!それこそが剣士が剣の腕を磨く理由さ!」
バンは子供のように剥きに成ってそう主張する。
「だから俺はエルティアともう一度戦いたいんだ!俺の剣こそが最強だと証明する為に!俺が遥かな高みへ上る為にな!!」
「遥かな高みですか、旦那が行ってた通り規格外な方ですね」
「あいつ、そんな事を言ってたのか。まあ、いずれ決着をつけてやるぜ」
バンが考える剣士の生き方をキルケは聞きながら、バンの破天荒振りと奔放さに苦笑する。
我欲丸出しのバンに呆れていたのである。
しかし、そんなキルケの意図に気づかないバンはエルティアに勝つことで頭がいっぱいであった。
「所でシスカはバンとエルティアが戦った二年前の剣術大会ではどこまで行ったんだい?」
「痛い事をいうなアレイダ。実はそのエルティアに準決勝でボロ負けをしたんだ」

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