PiPi's World 投稿小説

聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 37
 39
の最後へ

聖剣物語 39


そして三人は各々、別々な方角に向かって歩き始めた。
「おい!メリサリム!こっちに来るなよ!」
「私こっちに行きたいんです!勇者さ…バッカーズさんが私の前を歩いてるんじゃないですか!あっちに行ってください!」
「クソッ!!」
バンは逆方向へと足を向けた。
「我がある…いや、バッカーズ!私に付いて来ないでもらおうか!」
「チクショ〜!!テメェら覚えとけよ!?次会ったらケツとマ○コに丸太突っ込んで歯ぁガタガタいわしてやる!泣いて詫びても許さねえからな!」
バンは捨て台詞を吐いて、メリサリムともシスカとも別の方向へと歩いて行った。

「あ〜あ、うるせえヤツラが居なくなってせいせいしたぜ。さ〜て、これからどうすっかなぁ…」
ふと、クセで左右に目をやってしまうバン。
「あ、そっか…もういないんだったな…」
バンはいつもより眺めが良い両脇に少し戸惑いを覚えた。
「べ…別に俺は後悔なんてしてねえぞ…悪いのはアイツラだし……って誰に言い訳してんだ俺はぁ!?」
自覚したバンはボカボカと自分の頭を叩いて思考を追い出そうとする。
「ねぇ、ママ〜。あのお兄ちゃん何してるの〜?」
「シッ!坊や、見ちゃいけません」
近くにいた子連れの母親が慌てて我が子の手を引いて立ち去って行った。
(い…いかん!このままじゃ頭のおかしい人間だと思われる。落ち着け!落ち着いて心を静めるんだバン・バッカーズ!)
すぐに落ち着きを取り戻したバンであったが、旅の仲間を一気に二人も失った喪失感は、いかにタフな彼とて大きかったようだ。そして、そんな自分自身にもショックだったりするのであった。
(あ〜あ…俺、早まったかなぁ…でも今さら頭下げて許してもらうなんて出来ねえし…また新しい仲間を探すしか無えか…)
目を閉じればメリサリムとシスカの顔が思い浮かぶ。今にして思えば二人とも良い女だった(色んな意味で)。だが、もう共に旅をする事は出来ない…。
…と、バンがそんな事を考えながら哀愁に浸っていると…
「きゃあぁぁ〜〜〜〜っ!!!!」
絹を引き裂くような若い娘の悲鳴が通りに響き渡った。
見ると一軒の家の前で何やら揉めているようだ。
「へへへ…嬢ちゃん、大人しくしな」
「や…やめて!離してください!」
「お…お願いいたします!どうか娘だけは…!」
「あかんがな。ワイも商売やねんど」
商人らしき脂ぎった中年男と、二人の柄の悪い屈強な大男が、赤髪の少女をムリヤリ連れ出そうとしており、少女の父親らしき初老の男がそれを必死に止めている。
まだ幼さの残る顔立ちに、頬にソバカスのある可愛らしい美少女だ。
その光景を目にした瞬間、メリサリムとシスカへの想いはバンの頭から跡形も無く吹っ飛んだ。

「待てぃ!!この悪党共!」
さっそく正義のヒーローよろしく首を突っ込むバン。
「あん?」
「何だぁテメェは…?」
「あんちゃん、何や知らんがこれはワイらの問題でんねん。口挟まないで欲しいねん」
「うるせえぇぇ!!!貴様が悪の親玉かぁ!?」
バンは聖剣を鞘ごと振りかざし、商人らしき男を問答無用でブチのめした。
 ボクシャアァァ…ッ
「ぶぎゅうぅぅ!!?」
「だ…旦那様ぁ!?」
慌てて倒れた商人を助け起こす大男達。バンは赤毛の娘の手を取って気取って言った。
「お嬢さん、おケガはございませんでしたか?」
「あ…ありがとうございます…」
「オイお前!いきなり何さらすねん!?」
「黙れ!罪無き人々を苦しめる悪党め!剣の錆びにしてやる!」
「何勘違いしとんねん!ワイら借金取りやねんど!その親子が金返されへん言うから、借金のカタに娘もらって行こうと思たんや!」
「…え!?そ…そうなの…?」
バンは目を点にしながら親子に尋ねる。
「はあ、お恥ずかしながら商売に失敗いたしまして…」
「もう、お父さんったら…だから小豆の相場には手を出さない方が良いってあれほど言ったのに…」
「強盗じゃなかったのか…」
バンはつぶやく。
「ふざけるな!ワイら債権者やねんど!正当な権利を行使しとるだけや!」
「ウォッホン…これは大変失礼した」
決まりの悪いバンは仕切り直しとばかりにセキ払いして態度を一変させ、商人に言った。
「…私は聖剣の勇者にしてパラム王国貴族、バン・バッカーズ侯爵である。その親子の借金、この私が立て替えてつかわそう。額を申してみよ」
旅立ちに際して、バンは国王から多額の旅費を受け取っていた。
「聖剣の勇者やて?嘘くさ…まぁ、金払うてくれるなら勇者でも風車でも何もええわ。金貨100枚や」
「フッ…はした金だな…」
バンは余裕の表情で金を取り出そうと懐に手を入れた。だが…
「無い……あぁぁ!!!金、メリサリムに預けてあったんだったぁ!!」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す