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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 30

「ま…負けた…。まさか私の策が逆に私自身を追い込む事になろうとは…」
地に両膝を付いてうなだれるシスカ。バンは言った。
「…いや、策がどうのこうのいう以前の問題だ…」
シスカは剣を抜いた時、自信満々でバンに勝てると思っていた。そして自分が負ける事など考えてもいなかった。だから予測が外れて、いざ目の前に敗北の可能性を突き付けられた時、彼女はそれを受け入れる心の準備が出来ていなかった。ちょうど前半のバンがそうだったようにである。後半の彼女は自分の敗北のみを見詰めていて、目の前のバンを見ていなかった。その心の隙をバンは見事に突いたのであった。
バンは言う。
「…木剣での練習試合と違って真剣での果たし合いでは、お前の言う策だの小手先の技だのよりも、どれだけ覚悟が出来ているかの方が大切だったんだ。つまり俺もお前も覚悟が出来ていなかったのさ。真剣なんだ…ヘタをすれば殺し殺される事も覚悟しておくべきだった。その覚悟が無ければ剣を抜くべきじゃあない…この決闘で教えられたよ」
「…黙って聞いていれば、まるでお前は戦いの最中に覚悟が据わったような物言いだが…」
シスカは顔を上げた。
「お前だって怒りで恐れの感情を忘れただけじゃないか。それは覚悟とは言わんぞ」
「うっ…ま…まぁな…。それも俺の今後の課題か…」
バンはポリポリと頭を掻きながら言った。彼も死ぬのは嫌だ。去勢はもっと嫌だ。とても「はい、そうですか」と簡単に受け入れられる物ではない…。
「勇者様、おめでとうございます。シスカ様もご健闘でした」
そこへ、メリサリムがやって来て二人に労いの言葉を掛け、シスカに彼女の剣を手渡した。
「おう!ありがとうよ、メリサリム」
「済まんな…。しかし今さら何と言った所で私の負けは負け…」
シスカはメリサリムから受け取った自分の剣を見つめていたが、突然、何を思ったのか刃を翻して自分の方へ向けた。
「シスカ様!?」
「お…おい!何する気だ!?」
「黙って見ていろ!…敗れてなお生きるは騎士の恥…」
シスカは死ぬ気だ!
バンは咄嗟にそう思った。
「止めろ!シスカあぁー!!」
だが、次にシスカは自身の髪を…頭の後ろで束ねられた髪の房をグッと掴むと、それに刃を当てて引いたのだった。彼女の美しい長髪はバッサリと切り落とされた。
「「……???」」
バンとメリサリムはポカーンとした顔でそれを見ている。
シスカは切った髪を二人に見せて言った。
「本来であれば命を絶つ所…だが敗れた私には生きて果たさねばならぬ約束がある…この髪を以て断罪と為す事をお許し願いたい…」
「はあぁぁ〜〜…ビ…ビックリしたぁ…」
「寿命が縮まりましたぁ…」
脱力するバンとメリサリム。二人はシスカが本気で自刃すると思っていたのだ。
「それはさておき…我が主(あるじ)よ!」
「あ…あるじ…!?」
ホッと一安心しているのも束の間、シスカはバンの前に片膝を着いて、臣下が主君に対してするように頭(こうべ)を垂れた。
「はい…当初のお約束通り、決闘に敗れた私、シスカ・スワロウ、今後は貴方様の僕(しもべ)としてお仕え申し上げる所存にございます!」
「お…おう、そう言えばそんな事も…言ったっけ?」
さっきまで尊大な物言いの態度と異なり、恭しく自分を敬うシスカにバンは面を喰らった顔になる。
「ふふふ、シスカ様も勇者様を本当に『勇者』とお認めになったのですね。流石は勇者様ですわ」
バンのシンパが増えて喜ぶメリサリム。



その頃バンたちの故郷であるパラム王国では・・・

王都のとある高級宝石店の部屋の一室で、ロザリーは一人の男と話していた。

「ようこそ御出で下さいましたロザリー姫。イヤハヤ噂に違わぬ美しさですな」
「お世辞は良い・・・で?頼んでおいた件はどうなった?」
「お任せ下さい!我が組織でも選りすぐりの手練れの暗殺者を派遣いたしました」
一見すると、とても暗殺組織の仲介者には思えない。善良な商人その物といった男は、人の良さそうな笑みを浮かべながら、ロザリーにそう報告する。
「けっこう・・・それで成功の報告は何時もらえるの?」
「大陸からこの島までは。往復で一ヶ月掛りますからな・・・準備にもう一月として、だいたい二ヶ月か三ヶ月程で吉報をお届け出来るかと・・・」
「フフフ・・・期待しているよ・・・」
こうして遠いパラム王国から、復讐に燃える女の黒い殺意の刃が、バンの命を狙って放たれた。

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