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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 16

「フン!!意外と笊な警備だったな・・・」
王宮の自分の部屋を抜け出したバンは、婚約者であるロザリー王女の部屋のテラスに立っていた。
幾度となく好みの美女たちに夜這いを掛ける為、多くの屋敷に忍び込んで来たバンにとって、この程度の警備の眼を潜り抜けるなど、赤子の手を捻るがごとく簡単な事だった。(高い能力の使い方を明らかに間違えている・・・)

(この扉の向こうにあの女が居るのか・・・)
バンは柄にも無く自分が緊張して居る事を自覚した。
それどころか、彼の心臓は初恋のあの日に戻ったように、トクン、トクンと高鳴っている。
(ロザリー・・・)
彼自身に自覚は無いが、バンの心の中でロザリー王女は、今でもある種の偶像として残っていた。
彼が無残に散った初恋から、六年も経った今でも、彼女に憎しみを抱き、何人の美女たちを抱いても満足出来ず、常に新しい美女との出会いを求めるのは、このパラム王国第二王女であるロザリー・ファン・パラムシア王女の面影が、トラウマとして彼の心の中にこびり付いているからに他ならない。
故にバンにとってロザリー王女は何れにせよ、何時かは乗り越えなければ成らない存在だったのだ。
「失礼しますよ王女様」
バンはテラスの扉を開き王女の部屋に侵入する。
「何者じゃ!!」
(!!!!!!・・・・・)
そう言って振り返った王女は、バンが一瞬絶句する程に美しく成長を遂げていた。
美の神がその手で描いたかの様な美しい顔立ちは、人間の画家には思い描く事さえ出来ないであろう程に美しく、女という存在の一種の完成形とさえ思える程の美しさだった。
月明かりに照らされ、光輝く銀色の髪が、神秘的なまでの神々しい美しさを彼女に与えている。
もしも知らない人間が、彼女を見たら、月の女神が地上に降臨したのではと、勘違いするかも知れない。
また薄く透けるようなネグリジョに包まれた肉体は、十八歳という少女から女へと生まれ変わる一瞬の間だけ観る事が出来る完璧な芸術とも思える肉体だった。
もしも詩人が彼女を見たら、彼女の美しさを讃える言葉を見つけられず。すぐさま自分の才能の無さを嘆き、詩人を廃業するだろう。
芸術家が彼女の姿を見れば、その美しさを絵画でも彫刻でも完全に描き出す事が出来ない事に失望し、自らの筆を折るだろう。
パラム王国第二王女ロザリー・ファン・パラムシアはそれ程に美しい少女だった。
「…そなたは…」
「ひ…久しぶりだな…俺の事、覚えているか…?」
柄にも無く顔を赤らめるバン。いつもなら口から先に産まれて来たのかと思われるような軽口も今だけは重い。彼は自分でも解る程に緊張していた。女を前にして緊張するなど、数年前、初めて女を知った時から無かった。
「…覚えておるぞ、バン・バッカーズ。忘れるはずがあろうか…」
ロザリーは女神の如き微笑を浮かべながらバンに歩み寄って言った。
「クスクス…懐かしのう。6年前であったか…そなたが剣術大会で優勝し、わらわに告白してくれたは…」
「あ…ああ!そうだ、あの時以来だ!良かったぁ、覚えててくれたかぁ…!」
バンはまるで子供のように頬を紅潮させて喜んだ。ロザリーに覚えていてもらえた事がただただ嬉しかったのだ。
「バン、あの時わらわはそなたに対して酷い事を言うたな。あの時の事、今でも深く後悔しておる…なぜあの時素直になれなんだかと…」
ロザリーは伏し目がちになり悲しそうな表情を見せる。心なしか瞳も潤んでいるように見える。バンは彼女の両肩に優しく手を置いて言った。
「気にするな。昔の事だ。水に流そうじゃないか」
「真か?真にわらわを許してくれるのか?バンよ」
「許すも許さないも…これから俺達二人、夫婦になる仲じゃないか…一緒に幸せに暮らそう、ロザリー」
「あぁ…バン…!」
ロザリーは瞳いっぱいに涙を湛え、身を打ち振るわせながらバンを真っ直ぐに見据えた。
「嬉しい…!あの時は言えなんだが今なら言える。わらわはそなたの事をこの世界の誰よりも愛しく思うて…」
バンは感無量だった……が!
「…とでも言うと思った!?バアァ〜〜ッカ!!」
「え…っ!?」
聞き間違いではないか…バンは我が耳を疑った。だが幸か不幸か彼の耳は正確だった。
「あぁ〜〜マジで傑作だったわぁ!あんたマジ顔で『一緒に幸せに暮らそう、ロザリー』…な〜んて言うんだもん!もう吹き出しそうで吹き出しそうで笑い堪えるのに必死だったわよぉ〜!」
「だ…だから涙目だったのか!?」

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