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聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

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聖剣物語 110

「中々楽しい時間だったが・・・このケガでは長くは戦えんな・・・」
マティウスは何所か残念そうにそう呟くと、今まで片手で操っていた漆黒の大剣に左手を添え、両手で持ち直す。
(ハ!今更遅いぜ!!)
バンは内心そう呟くと、聖剣を何時もの防御重視の型に構える。
こうなった以上バンは守りを固めつつ、相手がミスを犯すのを待てばいい・・・一度守りを固めたバンの守備は凄まじく硬く、あの疾風のエルティアでさえ抜く事は出来なかったのだ。
この時バンは半ば勝利を確信していた。
「行くぞ!!」
マティウスは漆黒の大剣を上段に構えると、裂帛の気合いと共に剣を振り下ろす。
その一撃は雷のような鋭さだったが、バンにもなんとか対応できる早さだった。
(ふん!どうやらケガで焦ったようだな・・・俺も残念だよオッサン、アンタほどの達人の最後の一撃がこんな速いだけで、技も何もない単純な打ち下ろしなんて・・・)
バンは内心でそう呟きながら、その一撃を剣の横腹を叩く事で軌道をズラシ、隙だらけの肉体にカウンターで必殺の一撃を叩き込もうと横なぎに剣を振う。
(だが、安心しなオッサン・・・アンタの名は何れ必ず吟遊詩人共によって歌われる事に成る。偉大なる聖剣の勇者バン・バッカーズ様の伝説の一部と成り、永遠に語り継がれる事に成るだろうさ・・・)
だが、横腹に聖剣の一撃を受け、軌道を変えるハズの漆黒の大剣は、聖剣ダモクレスをアッサリと弾き飛ばす。
(え?)
次の瞬間バンの頭に鈍い衝撃が走り、バンの目の前は真っ暗に成った。

………

……



「……う…うぅ〜ん………あれ?ここは…?」
次に目覚めた時、バンはベッドの上にいた。
「…勇者様!?皆さぁん!勇者様が…!」
ベッドの傍らに置かれた椅子に腰掛けていたメリサリムが叫ぶ。
部屋の扉が勢い良く開かれ、シスカ、アレイダ、アイラ、そして最後にシャルロッテが次々に入って来た。
「主殿!ようやくお目覚めになられましたか!」
「…ったく、心配かけやがってぇ!」
「お…お前ら…俺はあの後どうなったんだ?」
自分は確かマティウスと戦っていたはずだ。それが急に意識が途切れて…。その前後の事を思い出そうとすると頭にズキッと鋭い痛みが走った。
「ぐ…っ!?な…何だ…?」
「安静にしてなさい。まだ傷が直りきってないんだから」
アイラの言葉にバンは頭を押さえながら訊き返す。
「き…傷だって?」
アレイダがそれに答えた。
「そうだよ、バン。お前はあのマティウスって男に剣の峰で脳天をブッ叩かれて昏倒したんだ」
シスカが続ける。
「主殿はあれから三日間も眠り続けておられたのですよ」
「三日だとぉ!?」
バンは信じられなかった。彼は慌てて身を起こそうとしたが、腕や腹筋に思うように力が入らない。それに物凄い空腹感もあった。それでようやく納得する。
「…何てこった…」
「お腹空いてるでしょう?宿のご主人に頼んで何か食べ物を用意してもらいますね」
メリサリムはそう言うと部屋を出て行った。
「…そういやぁココは一体どこなんだ?」
まさかあの村ではあるまい。アレイダが答えた。
「あの村から少し離れた所にある小さい町だよ。私がバンを負ぶって来たのさ」
「そうか…済まなかったな」
「フフン…良いって事よ」
「ファルカークや村の連中の追っ手は無かったのか?」
「連中それどころではなくなったようだ」
それまで黙っていたシャルロッテが壁に身を預けて腕組みしたまま言った。
「そりゃどういう事だ?」
「ま、簡単に言えば内輪揉めだ…」
シャルロッテの話をまとめると概ね下記のようになる。

…女達がバンを連れて村から逃走した後、兵力の大半を失ってしまった司教ファルカークはバン達の追討を断念し、とりあえず仲間達の死体の始末を村人達に命じた。
村人達が埋葬のため、教団兵達の死体から鎧兜を取り外していた時、彼らは大変な事に気付いた。
フルフェイスの兜を脱がせて見た教団兵達の顔に見覚えがあったのだ。
忘れようハズも無かった。
それは何と過去半年に渡って自分達の村を支配して乱暴狼藉の限りを尽くした憎き盗賊達だったのだから。
これは一体どういう事ですか!?と村人達が騒ぎ出し、ファルカークに詰め寄った。
問い詰められたファルカークは遁走した。
それで村人達はようやく自分達が騙されていた事を悟った。
まず盗賊団に扮した教団軍兵士達(というか元々教団軍兵士達はチンピラや盗賊崩れのような輩ばかり)が村を支配し、村人達を絶望のどん底へ叩き落とす。
そこへ正義の司教ファルカーク率いるアザトゥス教団軍が出現し、悪党共を追い払って村は救われハッピーエンド…という、全ては仕組まれた芝居だったのだ。

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