錬金術師カノンと五聖麗 59
「いやぁ…助かったぜ、リクシュナ。でもな、お前…俺の役目をとんなよな?」
「なにが?」
「お前はあの人の剣であり防具であり腕だ。で、ケティが脚であり感覚。そして俺が口であり耳であり目だぜ?それをお前が姫様に報告しちまったから俺の口としての役割が無くなっちまったよ、オイ。」
「それは済まなかったな。しかしイクトミ、貴様に人を二人抱えて、マルスから王都までこれたのか?」
「イクトミ様を舐めるなぁ!可愛い女性ならば二人だろうが三人だろうが楽勝だ!なんって下半身が元気いっぱ…」
スパンッ!
リクシュナの高速の突っ込みがイクトミを捕らえた。
「痛ぇな!」
「あなたは!なんで!そう!すぐにそっちの話しへ持っていきたがるのですかっ!?この変態蜘蛛!」
「残念でしたぁ〜。蜘蛛は変態じゃないですぅ〜!」
「黙れ!なにが残念なのかがわかりません!女の敵め!」
「俺はすべての女性の僕だ!敵になるなどありえない!」
「その考え方がすでに敵でしょうが!」
ギャーギャーと喚くスパイムの使い魔達。
「リアちゃん…うるさいね…」
「ええ、騒がしいわ…」
「でも楽しくありません?」
アイネがニコニコと笑う。
「バーカッ、バーカッ、バ…ぎゃあぁぁ!リクシュナ!剣を抜くなよ、オイ!」
その頃、カノン一行は…
「ご主人様ぁ〜!ばか乳に飲み物を取られたですぅ〜!」
「なによ!ちょっともらっただけじゃない!」
「それでも人のモノ、盗っちゃいけないですぅ。」
「ったく…なんで二人は仲が悪ぃんだよ…」
「「だって!」」
「はぁ〜…これから一緒に旅、すんだぞ?仲間割れして妖魔の餌なんかにゃなりたかねぇ…だろ?」
「そうだけど、別に妖魔程度なら簡単に斃せるわよ」
「まぁ妖魔ぐらいならアセリアなら簡単に斃せるだろうけど、いちいち相手にするの面倒いだろ?余計な体力を使うと後々ばてるぞ」
「う、分かったわよ……」
「全く、そんなのも分からないんですか〜?これだからエルフは……」
「五月蝿いわね、あんたに言われたくないわよ」
また二人は口喧嘩を始める。
「はい、そこの二人ストップええかげんにせぇ!今度喧嘩したらお灸を据える意味で二人にオシオキするから。意義は認めません」
『で…でもコイツが!!』
二人がハモるとカノンは突然口に指を当てた。
「さっきから、着いて来てた奴が俺の後ろから奇襲をかけるみたいだぞ。」
声を押し殺し言うカノンに二人の瞳孔が驚いたように開く。
彼女達は自分を一流の戦士だと自負していた。
瞳孔の動きは、相手はその自分達が殺気に気付けない程抑えられるとゆうことと、尚且つそれに気づく程カノンは格上であるとゆうことを見せつけられた二つのことの現れであった。
「暗殺者か殺人狂?なんにしろ、気配を消して戦うタイプって厄介なものね・・・」