錬金術師カノンと五聖麗 58
「リア……あぁ、何度かお会いした事がありますわね。爺や、通しなさい。」
「はっ…」
紳士が部屋を出て数分後、リアとシィナ、リクシュナが訪れた…
「失礼します…」
リアとシィナは恐る恐る入室するがリクシュナは畏まりながらも堂々と入る。
「あら?…あらあら、リクシュナじゃない!スパイムも来ているのですか?」
アイネは目を輝かせて尋ねる。リクシュナは首を振りつつ答えた。
「いいえ…そのことなのですが…」
リクシュナが口ごもらせていると…
「姫様!スパイムの所へ行っていただけませんか?」
「リアさん…どういうことでしょうか?」
「実は…」
リアが事の顛末をカノンについては暈しながらもアイネに報告した…
「そう…ですか……わかりました。行きましょう!今すぐにでも!爺や!」
呼ばれた紳士が入ってくる。
「私は今からマルスへ視察旅行へ出かけます。準備をして下さい。」
「しかし、姫!そんないきなりでは護衛も…」
「護衛なら近衛隊長のみで良いですわ!」
「ですが今夜は晩餐会が行われるのですが…」
「愛のためです。欠席しましょう!」
「それでは王国の面子というものが…」
「うぅ…でもスパイムが」
「アイネ様。主が目覚めるのは二日と半日後。明日に出立しても十分、間に合います…」
「いや…でもぉ…」
「姫…爺やを悲しませないでくださいまし。今夜…今夜の晩餐会にさえ出席してくだされば、明日から旅行にでもなんでも行かれて構いません!ですので!」
「し…しかたありませんわね…ですが明日、朝一で出立しますわ!」
「はっ…」
紳士は退室した。
「リアさん…あなたも今夜の晩餐会には出席なさるんでしょ?」
「ええ…と…」
「リアちゃん…お父様から手紙が届いてたけど…」
「えっ!?本当に?」
「うん…」
「姫様…出席します。」
「そうですか。では夜までスパイムの話しを聞かせて下さいませんか?シィナさんもご一緒に…」
「構いませんが…」
「決まりですわね!ではお茶とお菓子でも…リクシュナ!どこにいかれるのですか?」
リクシュナが窓から飛び立とうしていた。
「私は…もう用事もすませましたので…」
「では、リクシュナもご一緒しましょう?そうだ!今夜の晩餐会にリクシュナ、参加しましょ?」
「わ、私は貴族どころか人ですら…」
「良いのです。私の護衛という事で…」
「しかし…」
その時、開いた窓から一陣の風と共に一匹の蜘蛛が入ってきた。
「きゃあ!」
シィナが悲鳴をあげ、叩き潰そうとした。
「ま、待って下さいシィナ様!」
リクシュナがシィナを抑える。
「わ、私!蜘蛛って嫌いなの!」
「この蜘蛛は主の使い魔です!殺さないで下さい!」
「へっ?」
「そうだそうだ!嫌いだからってすぐヒトは虫を殺すから…」
風が巻き起こると蜘蛛は二十代半ばのいかにも軽そうな男になっていた。
「イクトミ…」
リクシュナが呟く。