錬金術師カノンと五聖麗 50
「そんなぁ…」
「なぁ、カノン…ありゃ、なんだ?」
「学院の追っ手です…」
「はぁ?追っ手つーと…イルヴァ、アルテマ、チルト、ヤイア…だっけか?」
「ええ…多分、その人達です…」
「イルヴァは同級だが…あんなだっけか、リア?」
「そんな訳ないでしょ!なんで男共はそう、ボケたがるの!」
「だって…この状況を理解しろってほうが無理あんだろ、なぁ?」
「そうですね…スパイムさん、あれ一体を相手できます?」
「フッ…楽勝!」
「あ…あの!」
「ん?…お〜!おぉ〜!」
スパイムはエリザの頭を撫でる。
「エリザ…何してんの?」
「はい…帰郷してまして…義父が店を開いてるんですよ…」
「そうか!行こうぜ!」
「はい!寄って頂けると義父も喜びます!」
「だから!なんであなた達はこの状況でそう和めるの!」
「ヒステるなよ、リア…」
「ああっ、もうっ!カノン君とスパイムが一体づつ!私とシィナで一体!アセリアさんとダークエルフの娘が一体ね!」
「カノン…こういう時に女って頼れるよな?冷静で…」
「うるさい、スパイム!」
「ああ、そうだ、流れ弾に当たっても責任は問いませんので、宜しく。まぁスパイムさんみたいのだったら当たっても平気でしょうけど」
「まぁ、的は得ているわね」
「おいおい、それはどういう意味だ?」
「言葉通りよ」
「まぁ、とにかくだ、余裕がある奴だけで構わんけど、自分の担当の敵と戦いつつ他の奴にも気に掛けてくれ」
「言われなくてもわかってるわ」「任せろ」「分かりました」「はい」「任せて」
「よし、では散会」
カノンは右側、スパイムは奥、アセリアとエリザは左側、そしてフォスナー姉妹は手前の異形を相手する形を取る。
まずはフォスナー姉妹…
「リアちゃん…私、怪我したくない…」
「私だって!」
「リアちゃんは指輪で強化してるじゃん!」
「い、や、よ!あんなのを相手するつもりはないもの!」
どちらが前線へ出るかを争っていた…
逆にアセリアとエリザは…
「私が前に出て、時間を稼ぐのでアセリアさんは後ろで呪文を…」
「いいえ、私が前に立つからエリザが魔法を唱えなさいよ…」
「でも…」
どちらが後方支援へ周るか悩んでいた。
「…人選をミスったかな〜。でも決めたのはリアさんだし…」
愚痴りながらも着実に追い詰めるカノン。
そしてスパイムは…
「はぁ〜…同級か後輩か知んないがな…恨むなよ?」
『……ほぅ?あのスパイムか…大きくなったな…』
「あん?どちら様?」
『ふふっ…覚えていないのも当たり前だが…実の父を忘れるとは…悲しいことだな…』
「………お、親父?」
スパイムの顔に動揺と混乱、そして憤怒が浮かぶ。