錬金術師カノンと五聖麗 49
「な…しばらくは動くこともできないはずだ!」
『君は…そうか、カノン・オルファリオ君か…いやはや錬金術とは素晴らしいな…しかし、敵が倒れたからと言って油断してはだめだな…では、諸君!二回戦といこうか!』
それまで倒れていた異形達が起き上がり、襲いかかってきた。その速さは先程までの数倍は速く、また連携の取れた動きに四人はそれぞれ、一体を相手する形に持っていかれた。
(…まずい。俺やアセリアは良いとして病上がりのシェリルとエリザが危ない…)
しかし敵は強く、不覚を取れば死に直結するだろう。
援護に向いたいが隙を見せれば確実に攻撃してくる。
『妖精のお嬢さん…マンドラゴラは私も狙っていてね…返して欲しいな…』
「学院ならまだしもあなたに返す義理はないですぅ!」
『そうか…残念だな…ドリアードもこんな優秀なナルタミストを失うのは心を痛めることだろう…』
異形がシェリルへ連撃を開始する。エリザが言ったように精霊力が低下しているのか、異形の速さと力に押され始める。
「あ……」
余裕の失ったシェリルは背後まで気が回らず、段差に躓いた。
『…運がないね…では……さようならだ!』
異形の腕が振り下ろされる。
「シェリル!」
ブンッ……
しかし、吹き飛んだのはシェリルではなく異形の腕であった。
『…なに?これは…レイブン・クロー?』
「なぁ〜はっはっ!スパイム様一行、参上!」
「闇系統魔法って便利ねぇ…私も覚えようかしら?」
「止めとけ止めとけ…失敗したら闇に呑まれっからな…」
「カノンさん!大丈夫ですか!?」
カノンに駆け寄るシィナ。
異形達は突然の第三者の介入により、攻撃の手が止まる。それにより、カノン達は一ヵ所に集まった。
「まいったな、乱戦は苦手なんだがなぁ。そもそも何故にシィナ達が居る?」
「それはですね、学院でマンドラゴラが盗まれまして、その足取りを追ったら、ここに行き着いたんです」
「ああ〜、盗んだ犯人なら其処に居るがな」
カノンはシェリルに指差しながら答えた。
「むぅ、盗んだって酷いですぅ〜、せっかくご主人様の為に役に立ちたかったのにあんまりですぅ〜」
「……あの、私の聞き間違いかもしれませんけど、その子カノンさんの事ご主人様って聞こえたのですが?」
「ああ……まぁ、今はそれはおいといて、今はこの状況をどうにかせねばなるまい?」
「……分かりました、この事は後で追求します。それでこの状況どうするんですか?」
「まぁ、各個撃破だな。それと、シェリルはちっこくなって何処かに隠れてろ?極小形態なら余分な魔力は消費せず、隠れ易いだろ?」
「え?でも私もご主人様の為に役に立ちたいですぅ〜」
「……俺の為だと思うなら、今は何もしないでくれ。護りながら戦うのは非常に面倒いし、現在力が減退しているお前じゃ、役に立たん」