錬金術師カノンと五聖麗 45
アセリアは別室でエリザがなだめていた。
「…なぁ、シェリル?何であんな怪我をしていたんだ?」
「私はご主人様の役に立ちたかったのですぅ。それで偉大なるドリアード様からカノンさんがマンドラゴラを集めてるって啓示があったのですぅ。それで…」
シェリルは中が亜空間になっている魔法の腰袋から鉢に生えた植物を出した。
「とってきたのですぅ!」
「おぉっ。偉いぞシェリル!……でもこんな希少なモノをどっから?」
「バレンシア魔術学院からですぅ…」
「………えっ?レミンハルトの?」
「はい…」
「………」
カノンは顔から血が引くのを感じた。
「あの怪我は追っ手の奴にやられたのですぅ…」
「追っ手は何人だった?」
「ご主人様くらいの年齢の男が六人でしたぁ。でも二人やっつけたのですぅ…」
「ってことはまずいな…」
(追っ手は魔術学院の五、六年生か教師…しかも二人やられたんじゃ退いてくれないか…こっちの戦力は俺、アセリア、シェリル、エリザ…いや、シェリルはエリクサーを飲んだといえど消耗してる。エリザも国の人間だ。泥棒には手を貸せないな…!待てよ…)
「シェリル!最後に追っ手と戦ったのはどこだ?」
「ゴータとマルスの間の街道ですぅ…あっ!もちろん街道の脇道を通りましたよぉ…」
(奴等は妖精をどうやって追尾したんだ?探知の魔法か?…違う、マンドラゴラは亜空間にあったんだ…じゃあ………)
「使い魔か!」
「え?」
「まずいぞ、シェリル…一旦、この宿から離れるぞ!ここに迷惑をかけたくない!」
カノンは部屋を出て、左の部屋のドアを勢いよく開けた。
「アセリア!この宿を出るぞ!武器と防具だけでいい!大至急だ!」
「え?どうして」
「ちょっと、今ここで話すのはまずい。取り敢えず言う事聞いてくれ」
アセリアにやられた傷は、どういう訳か既に修復していて、アセリアが何度か見た事のある真剣な表情になっていた。
そしてカノン達は部屋に書置きを残し、エリザに黙って家を出た。
「よし、ここら辺ならいいか……シェリル、探査魔術を使ってこの編に追っ手がいないか調べてくれ。あと、監視用の使い魔とかも逃さずにな?」
「分かりますたですぅ〜」
そしてシェリルは目を閉じ、神経を研ぎ澄ませ周りの状況を視始めた。
「……………感知したですぅよ!マルス内に四人、マルス、ゴータ間の街道に数人…すいませんですぅ。妨害を受けて街道の追っ手は上手く感知できないのですぅ。あと…」
シェリルは空気を圧縮した玉を近くの木に放った。
ドンッ!……ドタ……
木からフクロウが一羽、落ちてきた。
「あのフクロウが使い魔ですぅ…」
「よくやった!」
カノンはシェリルの頭を撫でる。
「えへへ…」
「む〜…」
アセリアは顔をしかめた。