錬金術師カノンと五聖麗 42
「な、なんだよっ、いきなり!?つーか俺はロリコンじゃあねぇ!」
「だって!その娘に!キ、キ、キスしたじゃない!」
カノンに掴み掛かろうとするアセリアをエリザが抑える。
「ア、アセリアさん!落着いて下さい!」
「放しなさい、エリザ!よくもこの私を弄んだわね!」
「弄んでなんかない!ただ!この子がね!気を失っていて!薬、飲めなかったから!く、口移しただけだ!」
「世の中では口移しとキスは同意語よ!」
暴れようとするアセリアをなだめるカノンとエリザ。しばらく端から見たらただの痴話喧嘩が続いた。
その様子を夜の闇にまぎれ、眺めるフクロウが一羽。
一時間後…
「だからな!薬を飲まさなきゃならないだろ!?つまりこれは介護であってキスとは別の次元の行為なんだよ!分かってくれたか、アセリア…」
「う〜〜…だってぇ…カノンがキスしたんだもん…」
「だぁからな!キスじゃないってば!な!?分かってくれよ!」
「だったら…わ、私にも…その……キ、キスして…」
「だ〜!なんでそうなるっ?」
「あっ!私は部屋を出てますね!」
エリザが部屋を慌てて、退出した。
逃げられた!?
ちっ、キスぐらいで治まるんなら10回だろうが、100回だろうが、やったろうじゃないか!?
そしてカノンはおもむろにアセリアの唇に吸い付いた。
しかもディープで……
ムチュ、チュー、チュパ
両方とも興奮し始めたのか、更にその先へ進もうとした次の瞬間近くから声が聞こえて来た。
「あの〜お楽しみのところ悪いんですけどぉ〜、ちょっといいですかぁ〜?」
声を掛けて来たのは、先まで寝ていたシェリルだった。
「うお」「きゃっ」
カノンとアセリアは驚いて慌ててその場から離れた。
「慌てて離れたところで何を今更?って感じ何ですけどね〜」
「……ああ〜、シェリル気付いたのか?」
「はい〜、目覚めてご主人様に話し掛けようとしたら、いきなり始めてしまったものですから声が掛け辛かったんですけど〜何やらキスの先まで行きそうな気配だったので慌てて止めに入ったまでですぅ〜」
「そ、そうか……」
「ねぇ、カノン、その子ご主人様って言った気がするのは気の所為かしら?」
何やら迫力のある笑顔でカノンを睨んでいる。
「……うん、気の所為だよ。突然頭の中に電波でも拾ったんじゃないか?」
苦し過ぎる言い訳である。
「ああ、そういえば逢うのは久し振りですね、ご主人様?」
場の空気を全く読まない、妖精らしく悪戯っ子なシェリルが更に傷口を広げて来た。
て、てめぇ、空気読め!確信犯だろ?くそっ、こういうときこの妖精らしい悪戯っ子な性格が恨めしい。
「ふ〜ん、どうやら私の聞き間違えじゃなかったみたいね?」
地の底から湧き出すような低い声で、シェリルは話し掛けてくる。
こ、怖!セイントエルフに全く見えねぇ……