錬金術師カノンと五聖麗 40
「あなた達だけで行きなさいよ!転送したげるから!」
「帰りが面倒だ…」
「馬車に揺られなさいよ!」
「グスッ、リアぢゃん…」
「今度は騙されないわ!それに私が今日何度、魔法使ったと思ってるの!?二人が限界よ!」
「ファッファッファッ!魔法薬学講師がここにおるぞ!エリクシルじゃ…」
カルゴは小瓶を幾つか取り出す。
「う…」
「諦めろ…運命だ。」
「諦めて…運命だから。」
「諦めなされ…運命じゃ。」
「う〜…分ったわよ!もうっ!」
薄幸の美少女リアは涙目になりながら言った。
「よし!これでまたサボれるぞぉ!しかも公用で!」
「ファッファッ!餞別じゃ、持って行け…」
カルゴはエリクシルの小瓶を数本、スパイムに渡した。ケティもスパイムの膝に頬を擦りつける。
「よぉっしっ!出発!」
マルスの夜、酒場宿『セルリアン』…
「ほぅ?この茸のスープ…旨いな…」
「ほんと!果実酒にも合うわ!」
カノンとアセリアはゴンゾが出してくる料理に舌鼓を打っていた。
「喜んでもらえて良かったです。」
エプロン姿のエリザが嬉しそうに言う。エリザは褐色の肌になっていた。
「しかし…エルフの薬ってのはすごいな。肌の色まで変えちまうんだから…」
「これはですね…ダークエルフの陰の気を陽の気に変えてるんですよ。だから人間が飲んだからって肌が白くなるわけじゃないですよ?」
「俺は魔法薬学の『授業』は苦手だったから…」
「へぇ〜、カノンにも不得意なモノってあるんだ…」
「そりゃ、俺だって人間だし。でも魔法薬学は先生がな…」
「嫌いなの?」
「いや…なんつーか、変人?あの人も学院じゃはみだしてるからな…」
しばらく他愛のない話しをしながら食事を取るカノンとアセリア。
「ふぅ〜…食った食った」
「お粗末様でした…」
「そんなことないわよ…とっても美味しかったわ♪」
「そう言ってもらえると嬉しいです。」
エリザははにかんだように笑った。
「…俺は腹ごなしに散歩に行くが、アセリアはどうする?」
「あっ、私も行く!」
「行ってらっしゃいませ。寝具を用意しておきますね。」
「ありがとう…」
カノンはセルリアンを出て、ぶらぶらと夜のマルスを散策する。その後ろを寄り添うように歩くアセリア。
「フフッ♪」
「何だ、アセリア?急に笑って…どうしたんだよ?」
「だって…これって人間達で言うデートでしょ?」
「まぁ、デートっちゃデートだが…」
「たしか、こう…腕を組むのよね?」
アセリアはカノンの右肘に手を絡ませる。
「あの…アセリアさん?胸が当ってるんですが…」
「当てているのよ♪男ってこういうのに魅力を感じるんでしょ?前に本で読んだわ♪」
「どんな本だよ…」
二人がイチャついていると…
ガタッ!…
右側の狭い路地から何かをひっくり返した様な音がした。