錬金術師カノンと五聖麗 37
「ぬぉぉ…止めろ!年輩者を大切にせんか!」
学院長はそう言うも、これだけの攻撃を食らっても無傷である。
「はぁ…はぁ…あ、安心しろスパイム…姫様は覗いていない…」
「それなら、良い…」
「「わけないでしょ!」」
シィナとリアはハモって叫ぶ。
「そ…それより儂に用があったんじゃないのか?」
「ジジィ、その誤魔化しかたはないぜ…学院にマンドラゴラってあっただろ?」
「ふむ…もし在ったら?」
「すっすこしでいいので、分けて下さいませんかっ?」
シィナが頼み込む。
「…何故じゃ?」
「それは…」
言い淀むシィナ。カノンが錬金術師だということ、またアセリアというセイントエルフのことを話さなければならない。
「…どうしたのじゃ?」
「その…」
「いいじゃねぇか!訳は今は言えねぇが、いつか絶対に話す。頼むよ…」
「ふむ…可愛い娘の忘れ形見の頼みじゃ。聞いてやらないでもない。しかし、貴重な物である。悪用はしないと誓うか?」
「ああ…」
「ええ、大丈夫です。」
「はい…悪用なんかしないわ」
三人三用の返事を返す。
「ほっほっ…悪くない顔立ちじゃ。どうやら信用してよさそうじゃのう。それではカルゴにこの許可証を持っていくがよい。」
「えっ?ジジィが持ってるんじゃないのか?」
てっきり直ぐに渡して貰えると思っていたスパイムは驚く。
「マンドラゴラは魔法生物じゃぞ?そりゃ、生物学に長ずる物が預かるのは当たり前じゃ。」
「はぁ…仕方ねぇなぁ…おいっリア!シィナ!カルゴの教室行くぞ!!」
「私…行かない……」
カルゴの名を聞いてから大人しくなっていたリアがいきなり口を開く。
「はぁ?何でだよ!!」
「煩いわねぇ…あの人不潔だから行きたくないのよ!」
ソッポを向きながらリアは言う。しかし、ちょうど運悪くその方向にはティナが目を潤ませていた。
「リアちゃん…行っでぐれないの?……」
「・・・・・はぁ〜…分かったわよ!行けばいんでしょ!行けば!!」
「うんっ、そうじゃなきゃ!じゃあ早速向かお〜!」
涙目をしたかと思ったら急に笑いだすシィナ。
「あんた…演技したわね…」
騙されたことに気づき冷静を保ってはいるが、悔しいとゆう文字がリアの顔に浮かび上がる。
「えっ?そんなことないよ〜」
シィナはスキップを刻む。
「不潔…ねぇ。俺ん中じゃあカルゴはまぁ、マシな方の教師だと思うんだけどな?」
「な、なっ何言っちゃってんのよ!あの目の下の暈!フケだらけのボサボサな髪!何本か抜けた真っ黄色な歯!極めつけはあの話し方!うぅ…想像しただけで鳥肌が立つっ!」
リアは両手で体を抱き、小刻みに震える。
「分ってねぇなぁ。カルゴは大陸でも高位の魔法薬、魔法生物の専門家だぞ?」
「あんた…ヤケに肩を持つわねぇ」
「……ここだけの話し、カルゴが研究に必要な神獣、幻獣の幾つかは俺が用意してんだ…」