錬金術師カノンと五聖麗 36
リアはそれを無視して手続きを行いに事務所への道を取った。
残されたシィナとスパイム。
「なぁ、シィナ…」
「……何よ。」
「別にカノンはお前の事が嫌いだから黙って旅立った訳じゃね。お前…いや、俺やリアもだが…奴等の旅に一緒に行って無事、帰ってこれる保証はない。カノンはお前の身を案じて黙って行っちまったのさ…」
「だけど…一言くらい言ってくれてもいいじゃない…」
「お前さんはカノンに置いてけぼりにされると分ってて見送ることができたのか?」
「でも…でもぉ……」
「ま、お前にできんのはカノンの無事を祈ることだけだな…信じてやれよ。惚れた男だろ?」
「うん……」
しばらくの静寂の後、シィナが口を開いた。
「スパイム…」
「なんだ?」
「ありがと…なんか元気が湧いてきた…」
「よせやぃ…照れんだろ?」
「そうよ…私はカノンさんを愛してるんだもの…私が信じないで誰が信じるってのよ?うん…大丈夫……大丈夫よ、シィナ…」
「恥ずかしい心の葛藤を口に出さない方がいいぞ?」
「うるさいわね!」
そこへリアが戻ってきた。
「学院長に会えるって…あら、シィナ。機嫌、直ったのね…」
「うんっ!ごめん、心配かけちゃって…」
「いいのよ。それより早く行きましょ?学院長も暇じゃないんだから…」
学院長室。
その立て札の前でシィナは立ち止まった。
「おい、早く開けろよ?」
「ちょっと待ってよ…緊張しちゃって…」
「か〜っ…んな気張ることねぇって。
おいジジィ、入るぞ!」
「スパイム!ノックもしないで…」
ガチャッ…
大きな扉の先には一部屋とは考えられない程、広い空間が待っていた。
「お〜いっ!ジジィ〜、何処だ〜!?ハッスルしすぎてくたばったか〜!?」
「スパイム!口を慎みなさい!」
「良いんだよ、これで…ジジィ〜!……」
「煩いわい!誰がくたばっとるか!儂はここにおるぞ!」
室内の階段を上った先、二階から声がした。
「おう、ジジィ!呼んだらすぐに返事しろよ〜。どうせ、また遠見でも使って女湯でも覗いてたんだろ?」
「ふむ、惜しいな。今日は使い魔を使っておった…」
あまりにも友好的に話す二人にシィナとリアは唖然とした。
そして同時に一同は沸々と心の奥底から怒りが込み上げてきた。
そして三人の心は一つになった。
制・裁・決・定!
ドカ!ドゴ!ゲシ!バキ!ゴリッ!ビシ!ザシュ!ドゴン!チュドーン!!!
「最低!最低!絶対に私も見られたーー!カノンさん以外の人に裸見られたー!」
魔力残量すら無視して致死量レベルの魔法を撃つシィナ。
「この変態じじい!勃ちもしないくせに……性犯罪者はここで滅びろ」
やはりリアも致死量レベルの火の魔法を放つ。
「オラオラオラオラ!これで姫様のも覗いてたら、それこそ寿命が縮むと思いな」