錬金術師カノンと五聖麗 32
「はい、帰りは徒歩か馬車で帰ります。シィナには心配するなって伝えておいて下さい。」
「わかったわ。その代わり鳩でいいから定期的に手紙でも送りなさいよ?」
「はい。」
「じゃあ、目をつぶって。町の外れに飛ばすから…」
カノンとアセリアは目をつぶるとリアの詠唱が耳に届く。
「テレポート!」
リアの呪文が完成する。
カノンはグラリと揺れる感覚に襲われる。
揺れが治まり目を開けると…
暴力と快楽の街ゴータ
と書いた看板が目に入った。
「無事着いたようだな…」
隣りにいるアセリアを見て、言う。
「そうね。その前に此処に入ってみない?」
「止めた方がいいぞ。治安が悪い」
「そうなんだ。じゃあ、さっさとマルスに行った方がいいわね」
そして二人はマルスに向けて歩き出した。
順調に道を進んでいると、道の中腹で盗賊と思わしき格好の十数人の男達が、小柄で可愛らしいエルフの少女(セイントエルフではない)を取り囲んでいた。
「なぁ、あれどうみても盗賊がエルフの少女を脅してる様にしか見えないよな?」
「というかそういう風にしか見えないでしょ?」
「そうか……んじゃ、助けに行かんとな」
「そうね、同属に手を出そうとした事を後悔させてあげるわ。フフフ」
アセリアが不気味な笑みを浮かべている。
「おい、怖ぇ〜な」
カノンがアセリアの笑みに怖がりつつ、二人はエルフの少女を助けるために絡まれている場所へ駆けて行った。
その時…
ドォォンッ!!
エルフの周囲を見えない波動が広がり、男達が吹き飛んだ。
「ぶ、無礼者!私は子供なんかではない!この外道供が!」
「「………」」
駆け寄ったものの、あまりの出来事に声が出ないカノンとアセリア。
「なんですか!あなた達も私が子供だと!?」
カノン達にも噛み付く少女。
「いや、俺たちはそんなつもりじゃ…」
アセリアは少女を指差し、口をパクパクとさせる。
「あ、あなた…ダークエルフ?」
カノンはエルフについては詳しくないが、ダークエルフは見た目で判断できるはずだった。
ダークエルフは肌が小麦色のはずだ。しかしこの少女の肌はアセリア程ではないが白い。
「え?だって…白いじゃん?」
「いいえ…魔法で白くしているだけよ。」
「そうよ。私はダークエルフ、エリザ・ファントム。こう見えてもすでに二百と三十二才です。」
「ほう…?」
しかし、年齢を聞いても見た目が十四、五歳のため実感がわかない。
「今!嘘だぁ〜とか思いませんでした!?ねぇ!?」
「いや〜思ったつ〜か、思ってないつ〜か…」
「ええ…ただ私達はあなたが襲われてると思ってね。まぁ、助けはいらなかったようだけど…」