錬金術師カノンと五聖麗 31
「ははっ…」
「よっしゃ!そうと決まれば呑み直そうぜ。すっかり酔いもさめちまったしな…アセリアちゃんも一緒にどうよ?」
「はぁ。じゃあ、せっかくなので…」
「そうこなくっちゃな!やっぱ華がないと酒がまずい!」
「ちょっとスパイム!それ、どういうこと!学年一の美女への挑戦状!?」
「自分で言ってちゃダメでしょ…」
「何よ!アセリアまで!…」
ギャーギャーと喚く三人を見てカノンは溜め息一つ吐き、思った。
(やれやれ、混沌はまだ続きそうだな…)
「今思ったんだが、アセリアが学院に行って大丈夫なのか?」
「え?どういう事?」
リアが聞き返す。
「アセリアは見て分かる通り、エルフだ。しかもその中で更に貴重なセイントエルフだぞ?絶対に注目されるぞ?下手すれば貴族や王家に伝わって実験動物扱いされるんじゃないか?」
貴族嫌いからか、カノンはそう思わずにはいられなかった。
「そして、俺自身も、錬金術師だとバレるのは拙い。特に、スパイムさんから漏れる可能性が高い。第一学院じゃ、オチコボレだぞ?そんな人間が一週間程度で達成出来ると思うか?」
それを、聞きしばらくリアは考え込む
「じゃあ、いいわ!私達が学園に行ってマンドラゴラの方は話しつけてきてあげる。でも、カノン君の言うとうりセイント・エルフが何処に行っても珍しがられるのは変わらない。だから、あなた達はマルスの薬剤館に行き人化剤貰ってきなさい。」
「マルス?」
「ええ、そこはエルフと人間の共同都市だからアセリアさんが普通に歩いても大丈夫よ。」
それにて、カノンは納得した顔をしたが、今度はアセリアが不安そうな顔をする。
「あのさ…それってエルフとしての魔力も消えるよね?」
「もちろん、魔法の力は弱くなると思うわ。でも、確か時間の制限があるから大丈夫よ。結局、珍しい異種族が旅するには必須アイテムでもあるしね。」
そういうと、リアはニコリと笑った。
(よしっ、完璧♪今の内にこんだけカノン君が遠くに行けば流石にシィナも行きたいとは言わないよね♪あとは、カノン君が帰るまでは学校だぁ〜♪)
「えーっ!それじゃあまた、授業受けるハメになるじゃねぇか!」
「黙れ、スパイム。マント燃やすぞ?あん?」
自分の策をを変えられそうになりいきなり口調が変わるリア。
「や、やめろ!馬鹿!燃やすな!泣くぞ!?泣いちゃうぞ、俺!?」
「はい、じゃあ全員賛成って事で呑み直しましょ…」
一夜明け、カノンとアセリアは家の前に居た。見送るためリアとスパイムもいる。
「じゃあ、俺達は行くから…」
「ちょっと待ちなさい。マルスまで徒歩で行ったら、往復で三か月はかかるわよ。行きはわたしが転送してあげるわ。」
リアは杖を取り出す。
「…ありがとうございます。」
「っても、マルスの隣り町のゴータまでだけどね。そこからは徒歩ね。」