錬金術師カノンと五聖麗 28
「……大事なクライアント(依頼者)だ。というか、俺の記憶が正しければ、思い出が欲しいという事じゃなかったか?というか、付き合うとは一言も言ってないぞ」
「え!?好きって言ってくれたじゃないですか!!?だったら、改めて言います。私と付き合ってください」
(なんとも、ここまで積極的に来るとはな)
心の中でそう思っていると、アセリアが強烈に猛反発した。
「だめよ!!聞くけど、貴女って貴族?」
「そうよ!私の父は王宮魔術団の団長よ!そして、その父の娘が私」
「ふっ、そうなの?カノンを好き好き言う割にはカノンの事を何も知らない様ね?」
「どういう事よ!?カノンさんが錬金術を使う事は知ってるわよ?」
「好きならそれぐらい知ってて当たり前よ。私が言いたい事はそっちじゃない。カノンはね、貴族が嫌いなのよ。貴族の貴女なら分かるでしょ?錬金術師がどういう存在で、知られたどうなるのかぐらい分かるでしょ?」
「むぅ〜…い、いいのよっ!カノンさんは私が守ってみせるわ!」
「無理よ…さっき、あなたの魔法を見せてもらったけど、話しになんないわ。それで『私が守ってみせるわ!』が聞いて呆れちゃう…」
「う…うるさいですっ!さっきのは本気じゃなかったんですっ!リアちゃんっ離れて!スパイム、短い間だったけど楽しかったわ!」
「ちょっと待てやぁ!」
今まで事の行きを傍観していたスパイムだが、矛先(しかも物理的な)が自分に向いたことで危機を察し、口を開いた。
「うるせぇ!というかあんたら誰だ?シィナもちょっと待ってくれ死んだら死んだで処理するのが面倒だ」
「むぅ〜……」
シィナはカノンに言われ、渋々魔法を撃つのを止める。
「はぁ、助かったぜ」
「よし、改めて聞くがお前等だれだ?」
最初に口を開いたのはスパイムからだった。
「よし、まずは俺からだ!俺の名はスパイム・ケルファン!偉大な王女様からケルファンの名前を頂いたのさ!凄いだろ!?」
「そんなのはどうでもいい」
「なにぃ!?偉大な女王様がくれた名だぞ!それをお前ってぐはっ!!」
「五月蝿い、黙れ!」
怒鳴るスパイムを腹にフックを咬まして黙らせる。
「さっきから言ってるが俺は貴族が嫌いだっちゅーてるだろ!?んで、お前は?」
リアの方を見てカノンは名前を聞いた。