錬金術師カノンと五聖麗 16
「そうじゃないよ!だって好きな人が死ぬかも知れないとこに行ったらリアちゃんだって心配になるでしょ?」
他人にはバカ丁寧で一辺の隙も見せないシャナでもリアの前では普通の女の子の面をだすらしい。
「はぁ…、じゃああんたが一緒に行ってやればいいでしょ。」
すると、シィナの目が急に輝きだした。
「そうだ!リアちゃんと一緒に行けばいいんだ!」
「はぁ?あんた何言ってんの?」
「だって学年内で実技試験ずば抜けてトップだったんでしょう?それなら私が怪我することないもん♪よしっ!そうと決まれば今すぐ行こう〜!」
「ちょ…ちょっとシィナ!!私はまだ行くとは!」
声は届かずニコニコ顔のシィナにリアは引きずられて行く。
「もう、いや〜!!」
学園内にリアの断末魔が響いた
「ふあぁぁっ…」
同学園の運動場脇で木陰に寝そべった青年が一人、盛大な溜め息を吐く。
「あぁ…退屈だ。なんかねぇかな?こう血沸き肉踊るっての…」
青年の名はスパイム・ケルファン。後世、カノンの伝説に必ず登場する魔導剣士。だが………
「午後の授業は…シュバルツか…サボろっと」
ゴロンと横になり惰眠を貪ろうとする。その耳に…
「いやぁぁっ…シャナ!放してよっ!午後はシュバルツ先生の授業なの!無断欠席なんてしたら嫌われちゃうじゃない!」
「いいじゃない、きっとシュバルツ先生も解ってくれるわ♪それにリアちゃんもいつまでも憧れ続けるのも良くないわよ?」
「いやよっ!私にはシュバルツ先生しかないのぉ!」
「どこが良いのよっ?カノンの方が百倍カッコいいわ!」
「シュバルツ先生はカッコいいだけじゃなくてねっ!優しいしっ!クールだしっ!動物を可愛がりそうだしっ!それに…」
「うるせぇっ!!」
最初は無視していたがあまりに騒がしく、寝付けなかったのでスパイムは怒鳴った。
「「!!」」
「ごちゃごちゃごちゃごちゃと…シュバルツはイイ男!はいっ終了!」
「スパイム?何してるのよ、こんなとこで?」
「昼寝だ。んなことよりリア…優等生のお前がサボリか?」
「違うわっ!拉致されかけてるのよ!」
「拉致じゃないわ!カノン一人じゃ危ないじゃない!リアちゃんは心配じゃないの!」
「妹の彼氏がどうなろうとね〜」
「むぅ〜」
シィナは頬を膨らませ、拗ねた様に唇を尖らせる。