海で・・ 964
いつもどおりの日常が過ぎる。
授業も真面目に受け、休み時間には彰人や涼、翔たちと楽しく会話する。
いたって普通の日々だ。
昼休み。
購買でパンとジュースを買ってきた僕は、もう一人、久しぶりに話がしたい相手を訪ねようと思い、図書室に向かう。
「あっ、一馬くん」
そこには変わらず、彩花の姿があった。
彩花を前にすると、なんだか凄く穏やかな気持ちになる…
この笑顔は、僕を一瞬にして暖かい日だまりへと誘ってくれるんだよね…
「相変わらず、ここには誰もいないんだな…」
シーンとした静寂の中で、僕の声がやけに大きく聞こえた…
「だからいいんですよ…ここは私のオアシスですもの…」
校舎の端のほうにある所為か、校庭やグランドの喧騒はまったく聞こえてこない。
しかも誰も来ないとなると、彩花にとってはまさにオアシスというわけか。
「一緒にお昼いいかな」
「ちょうど私も今からと思ってました」
彩花は机の上に可愛らしい弁当箱を乗せる。
「手作り?」
「母が毎日作ってくれます」
彩花のお母さんか…きっと美人で優しい人なんだろな…
「彩花はお母さん似なのかな?…」
「さあどうでしょう?…どちらかというと父に似ているかもしれません…」
それじゃあ彩花のお父さんは、イケメンって訳だな…
「よかったら今度家に遊びに来てください…母も喜びますは…」
彩花は見た目のイメージだとお嬢様って感じがする。
僕が行ったところで大丈夫かなとも思うんだけど…
「うん、機会があったら」
どちらにしてもいい人には違いないはずだ。
静かな空間で2人、お昼を食べる。
「誰かと一緒にいるというのもいいですね」
「うん…彩花って、友達とは…」
少し聞きにくいことだったが、思い切って尋ねてみた。