海で・・ 96
二人分のコーヒーを入れる。
「どうぞ」
「ありがと」
「一馬くん、私、気づいたことがあるの」
「何です?」
「真帆ちゃんと私って、何か、似てるなぁって」
その言葉に、一瞬ドキッとする。
「家庭教師として、真帆ちゃんの勉強を見ていて、そう思ったんだ」
「そう、ですか」
「うん…どこが、ってのはうまくは言えないんだけど、私と似てる感じがして…なんか、妹みたいな」
妹みたい…
その言葉に、さらに僕の心臓は高鳴る。
ミキさんも薄々気づき始めたのだろうか?
そう思うと、ますますミキさんと真帆に、事実を隠していることが申し訳なく思えてくる。
同時に、緊張感が高まってくる。
「私の両親は離婚経験してるし、真帆ちゃんとも歳が離れてるから、もしかしたら、ね」
…ミキさんの言葉を遮りたくなった。
それ以上は言わないでくれと思った。
でも
「なーんてね」
ミキさんは悪戯っぽく笑う。
「いくら他人とは思えないといっても、まさかそれ以上のことがあるなんてありえないよね」
ふぅ…
その言葉に、心底ホッとしてしまう。
いつかは二人に告げなければいけないことではあるが、そのタイミングは今じゃない…
もっと後に、言うべきときは待っているから…
その後、真帆も起きてきて、一緒に朝食をとる。
雪はやんでいて、窓から差し込む朝日が眩しかった。
朝食から少し時間が経って、ミキさんと真帆はそれぞれの家に帰る。
「またこうして勉強会出来たらいいね」
「今度は私の家でね!」
真帆の家、ね…
真帆は良くても、紀美子さんが見たら、どう思うかな…
門の前で二人を見送る。
複雑な思いはあれど、すごく良かったことだと思った。
家に戻り、ホッと息をつく。