海で・・ 935
久しぶりに紀美子さんに会ってもいきたかったけど、ちょうど入れ違いになっちゃたんだな…
まあこれからは真帆とも頻繁にこういう機会を作らなきゃだし…そのうち紀美子さんと会えることも、きっとあるよね…
「なんだ一馬…どうしてこんな所に?…」
ぅえっ?…
「と、父さん!…、父さんこそなんでこんな所にいるんだよ?…」
「いや…仕事からの帰りじゃないか…」
「…そうなのか?」
それにしてはいきなりだったからビックリしたよ。
「一馬こそ今帰りなのか?いつもより遅いじゃないか」
「まあね、友達の家に寄っていたんだ」
…さすがに本当のことは言えないな。
何たって、その友達とセックスしていたんだもんね;…
それにしてもこの辺りは駅から家までの帰り道でも無いのに、父さんはどうしてこんな所にいるんだよ?…
「この辺に仕事関係の人が住んでいるの?…」
さりげなく聞いてみる…
「あ、…ま、まあな…近くに住んでる人に“たまたま”車で送ってもらったんだ…」
この動揺…“たまたま”を強調するところもなんか怪しい…
それに近くに住んでいるしても、家からこんな離れた所で降ろされかな?…
…まあ、敢えて深くは聞かない。
もし父さんが隠れてあかりさん以外の人と…ということが本当にあったとしても、僕が父さんを責める資格はないだろう。
僕の場合はちょっと特殊だとしてもだ…
父さんとしばし2人並んで歩き、家に帰る。
「あら、2人とも一緒だったのね」
「まあね」
あかりさんはいつもどおりの笑顔で迎えてくれた。
父さんの上着を受けとり、一瞬止まるあかりさん…
何か気になることがあったのかもしれないよな…
「参ったよぉ!…帰り掛けに女の友達に化粧品買うの付き合わされちゃってさ…、香水だのクリームだの散々試されちゃってさぁ〜」
僕は慌ててありもしないことを言って、逃げるようにして自分の部屋に上がった。
匂いを嗅がれたら、そんな嘘…すぐにバレちゃうもんね;…