海で・・ 916
弁当箱を差し出しながら平沢先生はこちらに向かって笑顔を見せる。
あ、手掴みでいいのかな…出しかけた手を止めてしまう。
「…誰から聞いたんです?」
「美貴ちゃんだよ。いいお付き合いしてるんだって、とても嬉しそうだった」
「ああ…」
「聞いちゃだめなことだったかな…ごめんね」
「いえ…」
ミキさんが嬉しいのだったら、僕だって嬉しいに決まってるし。
「美貴ちゃんは鈴木くんにいろんな経験をして欲しいって言ってたは…」
「はい、僕の成長を妨げないように、きっと気を使ってくれているんです…」
「それじゃあ美貴ちゃんの意志を尊重してあげなくちゃ…だはね…」
「へぇ?…尊重って?…」
「ふふ、鈴木くん…“あ〜ん”してぇ…」
平沢先生はそう言うと、箸で肉団子を摘んで僕の前に差し出した。
「ええ?」
「ふふっ、ダメだったかな?」
「い、いえ…」
なんかそれだと、小さな子供のようにも思えてならないのですが。
でも期待に応えないと…と思い僕はその先に顔を近づけ、口に入れる。
「うん…美味しい」
「クス…口の周り汚しちゃって…」
そう言うなり平沢先生は手を伸ばし、指の腹で僕の唇を拭ってくれた…
「あっ;…ありがとうございます;…」
唇に触れられて、なんだかドキドキしてしまう…
もしかしてこれって…僕を誘っているんだろうか?…
可愛らしい平沢先生はとても子持ちの人妻には見えない。
しかも豊か過ぎる胸は男にとっては凶悪なもので…
今こうして向かい合ってる自分も、身体の一部分がどうにかなってしまいそうで困る。
「ふふっ、顔赤いよ?」
「だって、先生が…」
「うふふ、鈴木くん、やっぱり聞いたとおり、可愛い子ね」
クスッと微笑む平沢先生。
「私のことは潤でいいよ…一馬くん…」