海で・・ 912
「うん、ごめんね。頼りなくて…」
「そんなことはないです」
平沢先生はそう言うと、徹と同じ方に向かって歩いていった。
徹をめぐる問題は思ったより長引くのかな…
後姿を見送りながらそう思うのだった。
一人教室に行くとやっぱり誰も来てはいなかった。
それでも窓の外からは、ボールを追いかける朝練の奴らの声がいつもより大きく聞こえていた。
みんな青春してるよなぁ…
何やかんやいって、結局部活に入る時期を逃してしまったことをなんだか後悔してしまう。
…まぁ、強制ではないし部活に入らないのも選択肢の一つなんだろう。
そう思った。
授業はいつも通りはじまり、いつもと変わらない時間が流れていく。
4時間目が平沢先生の授業。
こちらを向いて微笑む先生が可愛らしく見えた。
多分、今朝僕に頼り無いところを見せてしまったことを気にしているんだろう…
でもそんなことは仕方ないよ…
本来なら勉強を教えるのだけが教師の仕事なのに、それ以外にも部活の顧問やら生徒の悩み相談やら…やることはいっぱいだからね…
改めて教師って職業の大変さに気づかされたよ…
「おい一馬…お前、平沢先生と何かあったのかぁ〜?」
横から彰人が肘を突いてくる;…
「そんなことないよ…」
実際、平沢先生と2人で話したのはあれが初めてだったし。
可愛い人だとは以前から思っていたけど…
「平沢先生って結婚していて、子供もいるんだってな」
反対から涼が言う。
そう、それだから余計に大変じゃないかな…