海で・・ 877
電車で移動し、そのホテルへ。
アヤさんの一族の経営するホテルだから、結構お高いイメージを抱いていた。
駅前すぐにそのホテルがあるという。
「3人で泊まるんです?」
「美月ちゃんと成美ちゃんがどうするか分からなかったから、一部屋ずつで…キャンセルしなくちゃいけないかな?」
「ごめんなさい…私がはっきりしなかったからご迷惑を…」
「やだぁ美月ちゃんは気にしないで…実をいうとこのホテル、私の友達の家がやっているホテルだから、ただみたいなお金で予約できたの…」
流石アヤさんだよな…
「そうなんですか?」
「だから宿泊代のことは、美月ちゃんも一馬くんも気にしないでね…」
「あ、はい…」
ミキさんとアヤさんの関係、いやアヤさんの存在自体をよくわかっていない園田さんは戸惑いながらも頷いた。
友達思いのアヤさんのこと、完全にとは思わないけどタダ同然で一泊する部屋を宛がってくれたのは容易に想像できる。
またいつか、お礼に行かないといけないな。
「一馬くんはこっちで、美月ちゃんがここね」
ミキさんがそれぞれの部屋に案内する。
「えっ?ここってベッドが二つありますけど…」
一人で寝る部屋に、ベッドは二ついらないんじゃ?…
「広く使えるようにってアヤが気を効かせてくれたのよ…、でもほんと広いよねぇ、これだったら三人で一緒に一部屋に泊まれるよね!」
確かにそうだ…
ベッド一つだってかなりのキングサイズ…
細身の僕らなら、これ一つでも充分に寝られそうだよな…
「じゃあ、どうしましょう…3人一緒の部屋にします?」
「私はそれで構わないけど」
ミキさんはベッドの端に座って感触を確かめながら言う。
「まあ…」
僕は慎重に、言葉を選びながら園田さんのほうを見やる。
僕だって構わない。後は園田さんの気持ち…
「良いですよ、私も…」