海で・・ 873
「ここで食べられるんですか?」
「ええ、すぐにメニューをお持ちいたしますので」
「すいません…こちらがいきなり来てしまったにもかかわらず」
ミキさんが丁寧に頭を下げる。
「いえ、お礼を言いたいのはこちらです。康介さんも本当のことを言うことができてようやく落ち着くことができたのではないでしょうか」
由紀さんは全てを知っていたってことなんだろう…
それにしても藤堂先生と由紀さんってどういう関係なんだ?
由紀さんに続き、さっき庭にいた若い男が御膳を運んで来た。
「やだぁイケメン〜♪」
成美;…君って人は;…
さっきの凛々しい表情はいったいどこに行ってしまったのですか。
…まぁ、オンオフ切り替えが早い成美らしいといえば納得だし、そういうところが魅力的で好きなんだけど…
手際よく御膳がテーブルに並び、僕らは食事を楽しむこととなる。
「美味しい〜」
成美さん、頬が緩みっぱなしである。
藤堂先生も笑顔でそれに応えている。
あんな話しさえ聞かなかったら、このまま藤堂先生を連れて帰りたくなっちゃうよ…
「美味しいですね、園田さん……」
ずっと黙ったままの園田さんに話し掛ける。
「あ、うん…」
心ここに非ずって感じか;…
何処かの誰かと違って、園田さんは見るからにナイーブそうだもんな;…
園田さんにとっては、僕ら以上にショックが大きいはず。
藤堂先生のことが好きなのは十分伝わってくるから、何とかしていい方向に導いてあげたいとは思っているんだけど、どうも今はそうも行かなくて困る。
散々泣きはらしてしまったのか目がまだ赤いような気もする。
彼女がついてきたことを後悔してなければいいんだけど…