海で・・ 868
まあそれをお膳立てしたのも成美な訳だし、めちゃくちゃ植田先輩のことが心配だったんだろうな…
「上辺だけと言われても仕方ないとは思っているさ…結局彼女には何もしてあげることは出来なかったからな…」
「そんなことは無いですよ…藤堂先生はその責任を感じて学校から去ったんですよね?」
突然職場から離れるなんてよっぽどのことだ…下手をすればもう教師として復帰など出来なくなるかもしれないんだ…
「植田さんとの関係は、自然に消滅したと思っている…彼女からの返事が来なくなったし、声をかけても避けられているような感じがした」
「…そうですか」
…瑠璃子さんは自ら身を引いたか、どこかで熱が冷めたとでも言うのだろうか。
成美は黙って頷いた。
「…藤堂先生が学校を追われたのは、それだけじゃないとでも?」
「…それをいつか君たちがきたときに言おうと思っていたんだ」
途端に深刻そうな表情と言葉。
藤堂先生は何を隠していたと言うんだ。
「鈴木と一緒に住んでるお姉さんいるだろ」
…あかりさんが?
「はい、父と付き合っている人で…もうすぐ僕の母親になる人です…」
母親って感じは全くしないけど、籍を入れるってことはそういうことだもんね…
「その一馬くんのお母さんになる人と、藤堂先生が何か関係があるんですか?…」
ミキさんが不思議そうに口を開く…
これはミキさんも知らないことなんですね…
「向こうでは鈴木の家の近所に住んでるんだ…それで、ちょっとした用があって訪ねたことがあるんだが…」
「そうだったんですか!?」
…これは知らなかった。
藤堂先生、家庭訪問でもないのに。
「そのときだ…そのお姉さんと、やってしまったんだ…」
「へ?」
…一瞬場が沈黙する。
「やったって…つまりそういうことですか…?」
僕はキョトンとした顔で沈黙を破る…
「ああ、あの時は鈴木、お前の母親になる人だなんてちっとも知らなかったんだ…、お母さんを亡くしたばかりだし、親戚のお姉さんか何かが手伝いに来ているんだろうとばっかり…」
まあ僕からしてみたらあかりさんはそんな関係みたいなもんではあるけど、だからと言って藤堂先生があかりさんと寝てもいいとは思えない…
「どうしてそんなことに?…藤堂先生は毎日のように先生たちとヤっていたじゃない…欲求不満ってことないでしょ?…」
ミキさんが首を傾げる。