海で・・ 867
僕は思わず成美のほうを振り向いた。
園田さんも一転、心配そうな視線を見せる。
ミキさんは相変わらず泰然としていて、藤堂先生は一瞬ハッとした表情を見せた後…
「…すべて話さないといけないことだな」
「瑠璃とあなたは、そういう関係にあったということですよね?」
「…それは、間違いないことだな」
藤堂先生は成美の顔を見てはっきりと言う…
それは今までの力無い声ではなく、どこか前の先生に戻ったかのようだった…
「それって…瑠璃先輩と…恋人関係にあったってこと…?」
声がか細くなったのはむしろ園田さんの方だ…
どこかその瞳も潤んで見える…
園田さんが、藤堂先生のことを好きなのは僕にでもわかった。
両手を胸の前で合わせ、何か祈るような仕草をしている園田さん。
「彼女がそういう思いを抱いてくれているのはありがたかった…でも、僕は…」
「植田さんとは、踏み込んだ関係に?」
ミキさんは淡々と尋ねる。
「ああ…間違いないよ」
「やっぱり…、瑠璃は真剣にアンタを慕っていた…私と違って軽々しくそういうことをする子ではないのに…」
成美の口調は強かった。話しながら拳を握りしめている。
「ああそれは分かった…彼女は初めてだったからね…」
藤堂先生はつらそうに表情を曇らせる。
僕だって、何人かの女の子たちの初めての体験を手助けしているだけに、他人事では無い気がした…
「結果として彼女を裏切ってしまったことになる…それは非常に申し訳なく思っているよ」
「うわべだけの謝罪なら誰だってできるよ…瑠璃はそれでショックを受けて…」
…瑠璃子さんが未だに藤堂先生のことを引きずっているとは、僕は思ってはいない。
最近は涼といい関係になっていて、楽しそうな表情なのは何度か見ていた。