海で・・ 866
そでも彼のイケメンぶりは健在だった…
陰が増した分、男の色気が増した…美樹はそう思った。
「元気が無くても相変わらずカッコイイんだからぁ〜…」
出来るだけ明るく、おちゃらけたように美樹は言う。
「そうですよ、やっぱり藤堂先生は僕の憧れの人ですよ。」
僕もめいいっぱい明るくそれに続く…
「みんな、ありがとな…今は教師でもなんでもない俺を…」
藤堂先生は少し俯いて頭を掻いた。
「それなんだけどね」
ミキさんが話を切り出す。
「藤堂先生の心が落ちついたらでいいです…いつか、また教師として戻ってこられることは出来ますか?」
「俺は、必要とされているのかな…」
「もちろんですよ…」
そう言いながら小野寺徹の顔が浮かんだ。
アイツみたいな男子は、まだまだいるだろうからな…
「水泳部のことは聞いたよ…シンクロ部には迷惑を掛けたようで…すまなかった…」
藤堂先生はミキさんと園田さん、それに成美の顔を見ながら頭を垂れる。
「そんな…藤堂先生がいなくなってからの出来事ですから…」
「…だけど、顧問であった俺の責任は重いだろう。もっとしっかり管理していたら起こらなかった出来事だろうしね」
「それを取り戻すためにも藤堂先生には戻ってきてもらいたいのです」
ミキさんが淡々と、それでも力強くきっぱり言う。
「時間はかかるかもしれない…それでもいいかな…」
「もちろんです!」
そう返したのは園田さんだ。
「それじゃあ戻って来てくれるんですね!…」
僕は思わず大きな声を出してしまう…
「ちょっと待って、水を差すようで悪いけど…私は納得がいかないよ…」
今まで黙っていた成美が突然に言う…
「瑠璃のこと…忘れた訳じゃないでしょうね?…」