海で・・ 864
裏口ってことは、あんまり歓迎されてない客ってことなんだろうか?…
まあこんな家の人に、歓迎などされても返って怖い気もするけど;…
表門から少し歩いた所に案内される…
「うぇ;…ここが裏口なんですか?!」
裏口っていうから、僕は勝手口みたいな粗末な出入り口を勝手に想像していたからね;……
裏口でも普通の家、いやそれ以上に大きく豪華に見える。
僕らはその門をくぐり、中へと案内される。
「ところで、あなたは?」
「あ、ええと…私は、ここで働いている者でして…」
可愛らしい方だ。ミキさんと同年代くらいだろうか。
落ち着いた大人の女性だ…
アップにしたうなじに、大人の色気を感じてしまう…
「あの…藤堂先…、ぁ藤堂さんは?」
なんだかここで“先生”をつけて呼ぶのはいけない気がした…
「おぼっちゃまでしたら、奥で皆さんのお越しを首を長くして待っておいでですは…」
お坊っちゃんって…藤堂先生はそんな存在だったのか…
あれだけのお屋敷に、屈強なSPに大型犬だもんな…
「さっそく、お話になられますか?」
「ええ…お願いします」
ミキさんが頷く。
後ろの成美も気を引き締め直す。
門から玄関までの敷石を、僕らは一列になって続いて歩く…
途中でほうきを持った若い男が僕らに気づき、慌てて頭を下げた。
これって僕らに向かってというよりも、案内してくれているこの女の人に向けて頭を垂れているんだよな…
実のところこの女性って、この家では偉い立場の人だったりするんだろうか?…