海で・・ 851
ミキさんがパンパンと手を叩くと、プールの中にいたシンクロ部の面々が続々と上がり、ミキさんの前に集まる。
それを遠目に見ながら、隣の徹に視線を移す。
近くで見るとさらにでかい。しかもがっしりしていて、身体に厚みがある。
「悪いな…」
「いや、別に」
視線を慌てて外す…
意識していると思われるのは釈だからな…
暫しの沈黙…
そんな居心地の悪さの中で、小野寺徹はボソッと言った…
「俺…お前と話したかったんだ…」
「へぇ?…」
「だからここにいるお前を見つけて…待っていようかなって思っていたんだ…」
恵まれた体格とは裏腹に、声は低く小さく頼りない。
見るからに不器用な性格なのがわかる。
「唯とは、付き合ってるのか?」
逆に聞いてみた。
「俺も付き合ってるのか…よくわからない。ただ、気持ちよかったからやらないかって聞いてみただけで…」
「おい;そんなこと唯に直接言ったのかよ;…」
それじゃムードも屁ったくれも無いのは僕でも分かる…
「ああ…いけなかったのか?」
小野寺徹はキョトンとした顔で僕に向かい首を傾げる。
おい;そんな可愛い顔して見詰めてくんなよ;…
身体とのギャップがあり過ぎるだろ;
…これは、何も知らないで言ったんだろうな。
見かけによらず天然というのか、無知が過ぎるというのか…
まあ、それを拒んでおきながら僕とやってしまった唯も唯だけどな。
「唯だってしたくない日があるんだよ。それくらい知っておかないとさあ」
「そうなのか…全然知らなかったよ…」