海で・・ 850
性格はもちろん、この演技を見てもミキさんが次期リーダーにと考えているのも納得してしまう。
改めて成美のことを見直してしまうよね。
「あらっ、あれって…」
ミキさんの言葉に促され、フェンスを見る…
そこにはプールを見ている長身の男子が立っていた…
小野寺徹だ。
成美と事が終わって、練習を見に来たのだろうか。
バレー部は今日は休みなのかな?
「噂の小野寺くんね」
「ええ」
「私たちの間でも話題になってるよ。バレー部の将来を担う存在だってね」
まさか小野寺徹は、先生の誰かとも関係しているのだろうか。そんなことまで考えてしまう。
まああれほどの身長を持ったイケメンだ、藤堂先生がいない今、女の先生たちの次のターゲットにされてもおかしくは無いかも…
「小野寺くぅん、よかったらこっちに上がって見学していかない?…」
ミキさんが声を掛ける。
「えっ?!…あ、はい…」
小野寺徹は気まずそうに鼻の頭を掻き、ちらっと僕のことを見た。
彼奴とはさっき唯をめぐってちょっとしたことがあった…
でも、互いに敵としては思ってはいない。
小野寺徹にしても、女性に引っ張られている印象があったからだ。
成美とだって、きっと小野寺がなすがままだったはず…
「一馬くん、いいでしょ?」
「僕は構いませんよ」
「どうも…」
プールサイドに上がって来た小野寺徹は僕の横までやって来た。
「お、おお…」
視線を合わさずに、僕は無愛想に言った。
「それじゃ、ごゆっくりね…」
ミキさんはそう言うと、僕たち2人を残し指導に行ってしまう…