海で・・ 84
「はぁっ…」
潮を吹いてイった美貴は大きく溜息をついてへたり込む。
「真帆ちゃん、上手ね…」
美貴がそう呟いたが、真帆には聞こえなかったようだ。
「二人とも…」
ようやく解放された一馬がゆっくりと身体を起こす。
「だってぇ、一馬くんが大好きなんだもん!」
「そうよ。私達は本気なんだから」
美貴も真帆も笑顔で言う。
「ミキさん…真帆…」
この二人は血の繋がった姉妹だ。
しかし、今は二人ともその事実を知らない…
「このままだと身体が冷えちゃうから…」
美貴が言う。
そして
「続きは、お部屋で、ね」
しばらく身体を温め、風呂から出る。
窓の外はすっかり暗くなっていた。
雪はやんだが、辺り一面真っ白で、しっかりと積もっている。
「今日、どうする?」
僕は二人に尋ねた。
「暗いし、雪すごく積もっちゃってるし…」
「ちょっと、これじゃ帰るのきついよね…」
ミキさんも真帆も、困った顔をする。
「さっきも言ったけど、うちの親、今夜は帰って来れないっていうから…」
「うん、泊まっちゃっていいかな」
ミキさんの言葉に、僕は黙って頷いた。
「ありがと」
二人とも笑顔になる。
そのあと、3人で夕食をとる。
家にある食材を使って、ミキさんが作ってくれた。
そういえば、ミキさんの手料理を食べるのは初めてだ。
食べることというか、ミキさんが料理が出来る人かも知らなかったのだから…
「ミキさん、美味しいです!」
真帆が言う。
「そう?それなら嬉しいなぁ」
ミキさんも顔を綻ばせる。
「家庭的な女の人っていいよね。憧れるなぁ」
「そうですね。私もお母さんみたいになりたいって思うんだけど」
理想の女性像を語る二人。
しかし、どこか複雑な思いがしてたまらない…
…それはやはり、2人が血の繋がった姉妹で、お互いがそのことを知らないからなのか。
家庭的な女性は僕も理想のタイプだし、紀美子さんは素晴らしい人だし…何も問題ないはずなのだが…