海で・・ 826
話しているのは、確かスポ薦でこの学校に入った、バレー部の…小野寺徹。
やたら背が高いから、嫌でも目立っているよな…
「あっ…一馬…」
僕に気づいた唯は一瞬驚いた表情を浮かべたが、次には小野寺徹を残し僕の元に駆け寄ってくる。
もう唯とは話すことはない、と思っていたからその行動に驚いてしまう。
小野寺徹からは僕の姿が見えないよう、廊下の突き当たりの手前まで下がる…
「何だよ…アレが唯の彼氏…なんだろ?」
「そ、そうだけど…」
「僕とは終わったはずじゃなかったのか?」
「終わったからって、話しちゃいけないってことではないじゃない…」
「まあそうだけど…こんな彼氏から隠れるようにして、誤解されたらマズくね?…」
「いいのぉ…それが狙いなんだもん〜」
唯はニッコリと微笑み、僕の肩に腕を回してきた。
とてもあの時、彼氏とよりを戻したいから僕とは最後だと言った、あの泣き顔と同一人物には思えない。
「アイツ、お前の彼氏だろ?」
「そう…だよ。でも、私は一馬も、好き…」
組んだ腕を僕の身体に密着させる唯。
彼女の意図がわからない。
「おい…見られるから止めろって…」
小野寺徹はあの背の高さだ…周りに人がいっぱいいても、頭の上から見通せちゃうだろうしな…
「一馬はそんなこと気にしないでいいから…ちゃんと私の言ってること聞いてる?…」
気にするなって言われても、目と鼻の先に彼氏がいるんじゃ、嫌でも気になっちゃうよ、普通…
「ここじゃやっぱマズイよ…小野寺徹に喧嘩売ってるみたいに思われたくないからね…」