海で・・ 812
「てっことは?…」
翔は何かを勘繰るような厭らしい表情を浮かべながら、片方の頬をゆっくりと上げた。
「馬鹿、そんなんじゃねーよ…出かけに抜いてきたから、そんな下心はねーよ!」
こんな所で何を言っているのかと思いながらも、心の底ではどこか期待していたことを翔に見抜かれ、余計なことまで言ってしまう;…
まだ何か言いたげな翔を振り切って、僕は保健室に向かう。
ホントに下心が…まったくないわけではないのだが…
少し緊張しながらドアを開ける。
「あ…久しぶりだね」
やってきたのが僕だとわかると、保健室の先生―新城歩美さんは、柔らかな可愛らしい笑みを浮かべた。
「なんか食い過ぎちゃって、腹パンパンなんですよね;…」
嘘じゃない…
一応どっか調子悪いところを言っておかないと、追い出され兼ねないもんな…
最近は、授業をフケル奴らのたまり場になっていることが発覚して、教頭たちが目を光らせてるっていうしね。
「ふふ、次の授業までゆっくりしてね」
「はい…」
歩美さんは優しく言う。
数ヶ月前、歩美さんとは保健室のベッドでやったんだよね…
歩さんの顔を見たとき、それを思い出してしまった。
「一馬くんは、あれから部活には行ってるの?」
「いや、たまに見学するくらいで…」
「そう…てっきり演劇部に入るのかと思っていたは…」
確かにあの時は、半分以上は演劇部に気持ちは傾いていたからな…
「それも考えていたんですけど、まあいろいろありまして…」
僕は頭を掻きながらベッドの隅に腰を下ろす。
「あらぁ?…いろいろって何かしらぁ…」
歩美さんは女子高生のように目を輝かした。