海で・・ 787
「あっ…いや、じゃあ…」
僕もその場を立ち去ろうとする。
…このままだとなんだか気まずい。
「…」
唯さんは僕をじっと見つめたが、その後一人で浴室の中へと入っていった。
最後まで後ろ髪ひかれるような表情だったのが…
僕はそのまま着替え、リビングに戻った。
ガラ〜ンとしたそこには、もう誰もいなかった。
皆自分の部屋に戻ってしまったのだろう…
秀人の部屋に行こうとも思ったけど、アヤさんとの時間を邪魔するのは気不味く思え、僕は1人ソファーに身を沈める。
カチコチと時を刻む古時計の音が部屋中に響いていた。
その規則正しさはやけに心地よく、僕は次第に睡魔に誘われてしまう…
「……くん」
どのくらい時間が過ぎたのだろう…
「一馬くん?」
どこか遠くで僕の名前を呼ぶ声がする…
「一馬くん、そんなところで寝てると風邪ひいちゃうってさっきから言ってるでしょう」
「……え、っ、ふあっ!?」
どうやらあのままソファーで寝てしまったようだ。
「唯さん…」
目の前には心配そうに僕を覗き込む唯さんの姿。
「ごめんなさい、皆誰かがやってくれるだろうと思っちゃったのよね…」
唯さんから石鹸の香りが漂ってくる…
「あっいえ、秀人の部屋に行けばよかったんですけど…」
僕は身を起こし、座り直す。
「あの部屋はダメよぉ〜一馬くんが行ったら3Pが始まっちゃうはよ…」
うぐっ;…アヤさんだったらそれはありえるよな;…
「ごめんね、せっかくお泊まりに来てくれたのに」
「いえ、全然。楽しませてもらってます」
あの頃とはまったく印象の違う唯さん。
パステルカラーの可愛らしいパジャマ姿、スッピンでもいつもと変わらず美人の顔。
その姿がとても魅力的に見えた。
「私の部屋、使ってもいいよ」
「えっ、唯さんの…」
「…一人じゃ寂しいでしょう?」