海で・・ 776
「あっ、愛美さんに会いたくなったら何処に連絡したら?…」
僕は携帯を探してしまう。
「ふふ、連絡先なんて教え合わなくても、縁があればまたいつかきっと会えるはぁ…」
「でもそれじゃあ…」
「どうしてもの時は成美ちゃんに言って。一馬くんの頼みならいつでもOKよぉ!…」
いえ、成美に頼むとか、厚すぎる障壁のような気がします…
成美のことだと、愛美さんとやったってすぐに感づきそうだもんなぁ…
「またね、一馬くん」
「はい」
そう思うと、別れは非常に惜しいけど、仕方ないものでもある。
愛美さんが引き上げて、また遥ちゃんの部屋に一人。
いつまでもここにいるわけにも行かないだろう…あ、そうだ、風呂入ろうかなぁ…
と、突然遥ちゃんが部屋に戻ってきた。
「ごめんなさい一馬さん…今日は別の予約がいっぱいで無理なんだって…」
遥ちゃんは拝むように僕に手を合わせた…
「へぇ?…何言ってんだ?」
「何ってマッサージの人…お願いしたいって一馬さん言いましたよね?…」
「それなら今帰ったばかりだよ…板野愛美さん、遥ちゃんの言った通り凄い綺麗な人だったよ…」
「えっ………?」
遥ちゃんは目を見開き、僕の目の前で固まったいた。
「どうしたの?」
「いえ…愛美さんは確かに家に出入りしているスタッフの方ですけど、マッサージの担当の人だったかなぁ、って」
「その忙しいって言った人が代わりに頼んだとか?」
「……かもしれませんが」
「気持ち良かったよ。なんかスッキリしたよ」
そう言うと、遥ちゃんも笑顔になった。
「よかったですね!おばあちゃんでもツボをちゃんと心得ているんでしょうね〜」
遥ちゃんは僕の肩に手を置き、軽く揉んでみせた。
「うぇ?…おばあちゃんって誰のこと?…」
多分遥ちゃんは、何か勘違いしているんだろうけど…
「愛美さんでしょ?…確か板倉愛美さんは70近いおばあちゃんですよ…」