海で・・ 769
「ちょっと冷っとするけど…」
そう言って愛美さんは僕の背中にヌルッとした液体を垂らす…
「何なんです?、それ…」
「マッサージ用の特製オイル…塗るだけでも効き目はあるのよ…」
背中に塗り込める手が、腰部分に伸びてくる…
ひんやり冷たい、それにヌルヌルする感覚、最初は変な感じがしたけど、徐々に気持ちよく、心地よく感じるようになった。
「成美…さんとは仲が良いんですか?」
「人懐こい妹よ。昔は身体が弱くて心配したんだけどね…今はパワフルというか、ねぇ〜」
身体が弱かったとはとても思えない;…
パワフルな成美しか想像はつきませんよ…
「学校でも元気ですよ。男子なんてタジタジですから…」
成美に攻められていた亮の姿が頭に浮かんできてしまう。
「あの子昔っからビジュアル重視だから、一馬くんも狙われてないか心配だはぁ…」
…もうすでに食べられてます、申し訳ないですお姉さん。
「僕にとっては成美さんみたいなグイグイ引っ張ってくれる人はありがたいですよ」
「ふふ、そうなの」
愛美さんは手のひらでオイルの幅を広げていく。
「成美ちゃんは強い身体になりたいって、水泳を始めたんだよね」
「あっそれでシンクロを…」
「初めは水泳部にいたんだけど、女子水泳部は廃部になったそうなの…」
それは初耳だった。
確かに女子水泳部があったら、ミキさんはシンクロじゃなくてそっちの顧問になっていそうだもんな…
「廃部って…何かあったんですか?…」
僕の頭の中には男子水泳部が起こしたあの事件が蘇ってくる…