海で・・ 746
「一馬くんは秀人くんとはタイプが違う感じね」
「ええ、僕もそう思います」
アヤさんやミキさんと知り合ったのも秀人が引っ張ってくれたからだしね。
「いつも男の人がいる生活が楽しいなって思います」
舞ちゃんが言う。
そうか、この姉妹のお父さんは常に仕事で忙しくてなかなか家にいないんだよな。
「でも僕なんて一人っ子だから、姉妹がいるだけで羨ましいですよ…」
直さんは僕の髪の中に指を入れる…
「隣の芝は青く見えるってことかしらね…」
あのぉ…僕の髪は芝生じゃないんですけどぉ;
「秀人さんもいいけど、私は一馬くんみたいなお兄ちゃんも…欲・し・い・なぁ」
舞ちゃん;…兄貴にそんなこという妹はいませんからぁ;
「結局うちの姉妹はみんな一馬くんのことが好きになるんだなぁ」
僕たちを見て優ちゃんがポツリと呟く。
「優ちゃん…」
「一馬くんって、女の子に好かれる秘密がたくさんありそうだなぁ」
…そんなことはないと思うけど。
「ははは、コイツは中学時代からモテモテだったんだぜ!…」
「おい秀人!…嘘ばっか言うなよ…皆が信じちゃうだろ…」
「嘘じゃないさ…本人が気付いてないだけで、一馬のことを好きな女子はいっぱいいたんだぜ…」
「だから冗談よせって;…」
「嘘でも冗談でも無いよ…今だから言うけどよ…真帆だって俺なんかよりずっとお前のことが好きだったんだぜ…」
「それ、ホントなのか?」
初めて聞いた話だった。
初音本人からもそんなことを聞いたことがあったが、そのときも驚いた。
「ああ…真帆が一馬を見る目は他の男とは違ったさ。お前は鈍臭いから気づかなかったかもしれないけどね」