海で・・ 743
あかりさんのことだ…きっと腕に寄りを掛けた夕飯を作ってくれているに違いない…
そう思うとなんだか申し訳無く、ここはメールでは無くちゃんと誤らなくちゃとも思う。
トゥルトゥルトゥル…と呼び出し音が連呼する。
あかりさんはなかなか出ては来なかった…
あれ?…風呂でも入っているのかな?…
なかなか電話に出てくれないと不安に思うし、ヤキモキしてくる。
まして今夜は秀人の家に泊まるんだものな…あ、今はアヤさんの家か。
「一馬くん…ごめんねぇ、なんだったかなぁ」
「あ、あかりさん…今日実は…」
あかりさんが電話に出てくれた。
僕は家に帰らず泊まることをしっかり伝える。
「おじさんに連絡?…」
携帯を切ると秀人が聞いてきた。
「あっいや、父さんの彼女…」
ごまかしてもよかったけど、秀人には言っておきたかった。
「へぇ〜おじさんもヤルなぁあ、その人と三人で一緒に住んでんだぁ〜」
「うん…まあ、もうすぐ四人になんだけど…」
「へぇ、おじさんとその人の子供?」
「ああ、そうだな」
「おじさん、すごいなぁ。おばさんを亡くしてすぐにそういうことができるって…後に引きずらないというか」
「うーん、それはまたちょっと違うのかな…」
言ってることは間違いではない。
それでも秀人には僕の複雑な状況を知って欲しくもあった。
「一馬、お前も大変だな…そんな継母が転がり込んで来ちまってよ…」
「あっ…だからそういうんじゃないんだ…あかりさんは僕にもよくしてくれるし、とても素敵な女性なんだ…」
何と言ったら分かって貰えるのか?…
「世間の人がいろいろ言うのは分かるんだ…あかりさんを悪く言う人が多いのも分かってる…だけど僕はあかりさんが来てくれて本当によかったと思ってんだ!…」
「一馬…?」
「家に帰ると明りがついてんだ…夕飯の準備がしてあって、あかりさんは何時でも笑って向かい入れてくれる…学校であった詰まらない話しだって熱心に聞いてくれるし、僕は毎日、家に帰るのが楽しみでしょうがないんだ!」
「わ、分かったから…一馬ちょっと落ち着けよ!」