海で・・ 735
「お前も一緒にどうだぁ!…」
ドアの向こうからデカイ声が響いてくる。
確かに優ちゃんとの後だけに、汗を流したい気分ではあった。
それでも秀人と一緒に風呂に入るのは久しぶりなだけに、なんだか気後れしてしまう…
「ん?…どうした一馬?…」
風呂場のドアが開き、全裸の秀人が顔を出した。
「早いなお前…」
さっきまでスーツ姿じゃなかったっけ?
「一馬、一緒に入らないのか?」
「あぁ…」
別に今日お泊りするわけじゃないし、絶対入りたいというわけでもない。
「一馬くんはリビングで待ってたら?」
アヤさんが顔を出して言う。
そうだ…
アヤさんに聞きたかったこと…翔のことを思い出した。
とは言え秀人の前ではこんなこと聞けないよな…
「悪りぃ〜風呂はいいや…」
「そ、そうか…そんなら今度ゆっくりな…」
秀人は残念そうに肩を落とし風呂場に入って行った…
「ごめんね秀人が無理言って…一馬くんが来てくれたのがよっぽど嬉しかったんだと思うは…」
「いえそんなことは…機会があったらいつでも呼んでください」
「ふふ、そうするね」
アヤさんはニコッと微笑む。
「あの、アヤさん」
「何?一馬くんはリビングでゆっくりしてれば…」
「いえ、ちょっと、人前では話しにくいんで…」
風呂場の前から、少し距離を置く。
秀人に声が届くとは思えないけど、もしも聞かれでもしたらいい気はする訳ないもんな…
増しては今秀人は、アヤさん一筋に浮気もしていないんだ…それが例え秀人と出会う前のことであっても、ショックを受け兼ねないよな…
「どうしたの一馬くん?…私に聞きたいことでも?…」
不思議そうにアヤさんは首を傾げる。
「あっ…はい。実は…千葉翔のことなんです…」