海で・・ 732
同い年、誕生日は僕の方が早いんだけど、今ダークスーツに身を包んだ秀人は僕より年上、大人に見える。
「なんか秀人がそういうカッコしてるのが信じられないなぁ」
「俺も未だに慣れないんだよなぁ」
そう言いながら上着を脱ぐ秀人。
「秀人お兄さん!」
「おう、萌、ただいま」
キラキラとした瞳で秀人のことを眺める萌ちゃん…
それは秀人に恋する眼差しなのだと、鈍いと言われる僕にでも分かった。
「おい秀人…いいのかよ?…」
「おい一馬、何か厭らしいことでも考えてんのか?…そんなことより、あんな可愛い子の初恋の相手になれて、俺としては光栄なんだ…」
「秀人も年下の女の子に目覚めたか」
「いや、一馬、その言い方はどうかと思うんだが」
「冗談だよ、でも…萌ちゃんはいい子だよな」
「ああ、それは間違いないよ」
優ちゃんの後を、パタパタと可愛らしくついていく萌ちゃん。
「優とは同じクラスなんだろ?」
「家ではよく話すのか?」
「ああ聞いたぜ、こないだのお泊り会のこと…」
秀人は意味深に笑い、僕の肩に腕を乗せてきた…
「う、うん…秀人とアヤさんには話したって、優ちゃんから聞いたよ…」
僕は照れながらそれに返した。
「まああの子は奥手だからな、そういう機会でもないと、一生処女のままだったかもしれないからな…」
「一生って…」
「俺も最初は言いすぎだと思ったよ。でも彩は大真面目にそう言うんだからさ」
「アヤさんが?」
…アヤさんはやっぱり妹思いのお姉さんなんだな。
「高校で変な男に捕まってやられるのを考えたら、初めての相手が一馬でよかったと思うよ」
「そうか…」