海で・・ 718
「アヤさん、ちょっと変わったような気がします」
「ふふっ、そうかなぁ?美貴にも言われたなぁ…」
ハンドルを握りながらアヤさんは照れ笑いする。
「私もだけど、秀人も変わった気がするわ…」
「お子さんの力ですかね?」
「かもしれないね」
「アイツ、張り切ってます?」
「ええ、あの歳だったらまだまだ遊びたいだろうに、毎日仕事仕事の毎日だはね…」
「そうなんだ…頑張っているのか…」
なんだか僕一人置いてけぼりにあったような虚しさが、胸の中に渦巻いた…
「よかったら家に来ない?…夕食までには秀人も帰って来るだろうし…」
「いいんですか?迷惑とかにならないんじゃ…」
「一馬くんなら大丈夫よ。それに、優以外の妹にも会ってみない?」
「は、はあ…」
「帰りも私が送って行くから」
アヤさんは車を左折させながら僕にそう言った。
「なんか秀人と会うのも久しぶりですよ。アヤさんの出産の時以来ですかね?…」
「あの時はわざわざ来てもらってありがとうねぇ…凄く嬉しかったよぉ!」
「それゃあ当たり前ですよ。何たってアヤさんと秀人の子供ですからね!」
アヤさんと秀人は、僕にとってはかけがえのない存在だからね。
車はしばらく街中を走ったあと、住宅街の中に入り、大きな門のある家に入ったところで止まる。
さすが小島家、広大な敷地に立派な家だ。
「さあ、ついたわよ♪」
ガレージに車を停めアヤさんは言う。
「すごいですね」
「これだけで驚いてもらっちゃ困るかなぁ」