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海で・・
官能リレー小説 - 年上

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海で・・ 707

僕は翔の肩に額を着けたまま頭を上げることが出来なかった。
これ以上情けない顔を見せたくなかったのだ。

「シャツに鼻水着けんなよ…」
耳元で翔がボソっと言う…

僕はわざとそのシャツに顔を押し付け、塗れた顔面を左右に振った。
「をぉい?!汚ねぇーなぁー!」

僕はニヤッと笑いながら顔を上げることが出来た。
「ははは、翔のシャツ。汗臭せぇーぜ!」

「お、お前、ちょっと気を許したら…」
「翔がこんなに優しいヤツだとは思わなかったなぁ〜」
「このやろう…!」
そう言う翔だが、仕方ないなといった感じの笑顔で、僕に対抗して汗を擦り付けようとしてくる。

こんなに馬鹿っぽいけど楽しいのはいつ以来だろうか。
翔はまるで、かつての秀人のように見えた。

こんな風にじゃれ合っていると、不思議と唯のことは忘れられた。
唯どこか、僕は女なんか知らなかったあの頃に戻った気分になる…

狭い屋上を追い掛け合いながら、身体をぶつけ、また走り回った…

脚がもつれ、コンクリートの床に倒れ込んだ翔の背中にのしかかる…
“はあはあ”と熱い息を吐きながら、僕はその背中に体重を預けながら言った。

「ありがとな…翔…」

「ああ…お前が元気を取り戻せたならそれでいいさ」
翔はワイシャツを拭いながら笑顔を見せた。

「お互い『本命』は泣かせないようにしないとな」
「俺は陽菜、お前は信藤さんをな」
「うん」

太陽が雲の間から姿を現し、僕たちに明るい日差しをもたらしてくれる。

仰向けに寝転び、その暖かい温もりに包まれる…

「俺…お前と友達になれてよかった…」
横で寝そべる翔が呟くように小さく言った…

「うん…僕も…」
空を見上げたままそれに答える…

天高く鳥が飛んでいた…
僕は気付かれないよう、涙を拭った。

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