海で・・ 705
「気にするなって言われたら余計に気になるよ…、それにそんな急いでどうしたんだよ?…定刻までまだ余裕あるだろ…」
しっかり制服を着込んだ唯に対して、僕はまだパンツすら掃いてはいなかった。
「ごめんね一馬…一馬のことずっと大好きだから…」
両手で僕の頬を挟む唯…
「答えになってないじゃ…ぅ」
僕の話しを遮るように、唯の唇が重ねられた…
そのままのしかかるように唯は僕の身体に体重をかける。
首元に手を回ししがみつくように…
「だから…いったいどうしたんだよ?」
「彼がね…よりを戻してほしいって言ってきたの。私は、一馬が好きだけど、一馬だってホントの彼女を裏切るのもしたくないだろうし…だから決めたんだ…」
そうだったのか…
「それじゃあ…唯とデキるのは…これが最後だったってことなのか?…」
分かっていながらに僕は言ってしまう…
「ごめん…相談も無しに1人で決めちゃって…」
唯は眼を潤ませた…
「そんなの…寂しいよ…」
僕は唯を引き止めるように、その身体を強く抱き絞めた。
唯は真面目で一生懸命で、不器用だけど一途な子なんだ。
いろいろ考えた末、この決断を下したのだろう。
僕なんかよりずっとしっかりしてるよ…
「一馬のこと、大好きだよ…私も、もっともっと一緒にしたいよ…」
僕の胸にすがりつき、嗚咽を漏らす唯。
その身体を、何も言わず抱きしめた。
未練たっぷりの口付けは、自然と深いものになっていた。
このままもう1っ回…
そう思った時にトゥル…トゥル…と定刻を知らせるインターホンが鳴った。
当然延長しようと僕が受話器を取ったその時に、唯はスルッと僕の身体を抜け、部屋から出ていった…
「ちょっと待てよ!」
追い掛けようと扉を開けるが、自分が全裸であることに気付き、僕はその場から動くことは出来なかった…